第1章 修行編【1】
それがしの名は東風双葉!
1545年(天文14年)11月15日に北九州筑紫の国で菅原道真公の末裔である東風家で生を受けた。
東風家は菅原家一族には珍しく文学や学問よりも武芸に秀で、東風流武術を興し3代に渡り継承している。
もの心がつくと2歳年上の姉、一葉とともに至極当然の如く鍛錬を始めていた。
ストレッチで身体じゅうの筋肉をほぐしたあと一葉と組んで柔軟。
ランニングにダッシュ、腕立て伏せ、腹筋、スクワットetc。
早朝の体力作りを終えると、裏山に入り山菜、キノコ、果実などを採集する。
春は竹の子、秋はマッタケや栗など自然の恵みが豊富に取れる。
今日は栗がたくさん取れたので、大好物の栗ご飯にありつけそうだ。
丼で5杯は軽くいける。
双葉は大食漢だが小柄で体重を感じさせないぐらい身が軽い。
特筆すべきは素早さ!
修行を始めて数年後には速さに増々磨きがかかり、俊敏さだけなら師範代補佐の一葉を凌駕するほどまでになっていた。
13歳になったばかりの双葉は、明日東風流の免許皆伝を認めてもらうための最終試験を受ける。
異例の早さだ。姉の一葉が先日免許皆伝の最年少記録を塗り替えたのが15歳。
それを更に2年も上回る。
双葉の桁違いの才能が日々の鍛錬で開花して認められたのだ。
最終試験の相手は一葉! 相手にとって不足はない。
今まで申し合いで一度も勝ったことがないが、不思議と気負いはない。
一葉と双葉は静かに対峙している。
互いに一礼を済ませて、「始め!」と号令がかかると身構えた。
二人はじわじわと間合いをつめていく。
間合いの長い一葉から仕掛けて、拳と蹴りを繰り出す。
双葉は受けずにかわす。受けてはだめなのだ。
受けたとたん動きが止まるからだ。
双葉は一気に間合いをつめ、拳を放つ。
一葉は逆にかわさずに受けて双葉の動きを止めようとすると、双葉が間合いをとる。
一瞬も気が抜けない攻防が続く。
お互いに東風流の秘技を使えば返し技を食らうので使えない。
膠着状態になるのを嫌ったのは双葉の方だ。
このままだと体格差が大きく、じり貧になり押し切られてしまう。
いつもの負けパターンだ。
だが双葉はこの日のためのとっておきの新技を編み出していた。
大きく息を吸い込むと軽やかにステップを刻み始める。
ゆっくりと反時計回りに一葉の周りを回っていく。
速度に変化をつけながらも徐々に速度を上げていく。
背を見せるわけにいかない一葉は双葉に合わせて回転せざるを得ない。
今だ! 双葉は反転し、時計回りに動きを変える。
この瞬間、一葉の視界から双葉が消えた。
勝負あった!
双葉が一葉の後ろを取ったのだ。ここからの逆転はありえない。
「そこまで!」
審判役の師範代、範馬勇作が声をかけると、「参りました。見事です、双葉。」と一葉。
「ありがとうございました!姉上。これで1勝45敗でございます。」
「最後に勝つことにこそ意味があるのだ。だから次は私が勝つよ。」
「ならば、もう姉上とは戦いませぬ。」
「双葉!それはずるくないか?」
「姉上より格上である立場を維持するためにはやむを得ぬかと存じます。」
「なんと胸、、、器量の小さきことよな!」
「今胸といったな?いったよな⁈ ムキー⁈」半分よこせと一葉の乳房につかみかかる双葉。
「それぐらいにしておくがよい!二人ともこちらに。」と東風流女当主=東風雪風。
「双葉、今より免許皆伝とし、師範代補佐筆頭に任命する。
一葉を補佐次席とする。」
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