花咲かG SUN
こんなドリームを視た。
その村は、近隣の宿場町へ助郷に出た有為な若者がそのまま出奔し、残った者といえば御年配の方か、裏桔梗という偏執的なペンネームで小説を発表しているような世を拗ねた者ばかりで、実に活気のない
でも、貧しいながらも皆、自分たちの子供を遊郭や南蛮人に売り払い、そのお金で荒寺に賭場をひらいて丁半を楽しんだり、畑仕事をそっちのけで花見をしながらお酒を飲んだり、そして年貢の支払い時には、お米の代わりに現ナマでお願いしますってお代官様を泣き落とし、それで何をするかといえば近隣の町へ繰り出して車上荒らしをしてカーナビ等を転売屋に売り払うなどして間に合わせ、それでも足りない時は密かに山奥で栽培しているケシの花を精製し、しかし売りさばくつもりが意志薄弱なものだから自分の方がラリって中毒者になってしまって後戻りが出来なくなって「もう毎日が薔薇色です」
ウフフ、そんなこんなで結構楽しく暮らしてヰタ(セクスアリス)。
その村には正直者の爺さんが住んでいた。
もう正直すぎて、どれくらい正直かというと、例えば、死に瀕している重病人に向かって小耳に挟んだその人の余命を正直に告げるほどの正直者で、或いは、若い娘を見ると迷わずアレをおっ立てて追いかけまわし、しかしながら三十路以上には目もくれず、借りた金はすぐに忘れる反面、貸した金は利子率五十%で地獄の底まで追い立てる執念を見せ、強い者にはとことん媚びる代わり、弱い者へ得意になって暴力を振るい、雨ニモ負ケテ、風ニモ負ケテ、アラユルコトヲ自分ヲカンヂャウニ入レテ、西ニツカレタ母アレバ見テ見ヌフリヲシ、美人妻ナラバ犯シニイキ、南ニ死ニサウナ人アレバ遺産ヲ狙イ、ミンナニデクノボート呼バレルト鬼ノ形相デツケネライ、といったように、本当、馬鹿がつくほどの正直者なのだ。
その正直ぶりに感心したポチは、こいつを生かしておいてはならぬと思い、一計を案じたのだった。
「ここ掘れワンワン」
そうやって埋蔵金の在り処を示唆し、すると正直者は自らの欲望への正直さから夢中になって穴を掘り進めるだろうから、その最中に頃合を見て、生き埋めにしてしまおうという腹づもりだ。
「大判小判がざっくざく?」
正直者は実に単純に喜び、しかし働きたくないという本能にも正直だから、大きな穴を掘るのは面倒臭いとそっぽを向いた。しようがないので、ポチは作戦を変更し、自分で穴を掘ってやった。小判が出てきたところで、正直者はそれを漁るのに必死だろうから、その間に埋めてしまおうと考えたわけである。
穴の横には、ポチの掘り返した土が盛られ、みるみる小山のようになっていった。
と、その時、正直者の脳裏に、あるアイデアが浮かんだ。
なんというか、ここでいきなり小山を崩し、ポチを生き埋めにしたら面白かろうと。
まあ小判は勿体なかったが、ポチの困惑する顔を想像したら、もう辛抱たまらなくなってしまった。
「どりあ」
正直者は喜色満面、盛られた土を崩し、ポチごと穴を埋めてしまう。
「うお、貴様、何をするか?」
びっくりしたポチの顔ったらもう。
正直者は弾む足取りで家へ帰った。
――また金に困ったら掘ればいいや。場所は分かっているのだから。やっぱり俺って頭が良くて愉快な奴であることだよなあ。
正直者は、思いついたら即実行。明るく陽気なポジティブ人間なのだ。
ポチは正直者の純真さを見誤っていた。
しかしながらその後、正直者の隣に住んでいる嘘つき爺さんが、イチョウの木の影から一部始終を見ており、急いで土を掘り起こしたので、ポチは一命をとりとめた。
お礼にポチは、埋まっている小判を嘘つき爺さんに進呈したのだが、嘘つき爺さんは自分の欲望に嘘をついて、小判を共同募金会へ寄付などしてしまった。
嘘つきもここまでいくと堂に入ったものだな。
ポチはいたく感心した。
感心し過ぎて首が百八十度回転した。
悪魔にとり憑かれてゐるのだ。
暗い画面にスモーク、メリン神父の影、エクソシストのテーマで幕。(完)
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