ウィシッユコレクター

アスタ. 天ユ

序章:メモリアルウィッシュ

ファイル0:願いの底(プロローグ)

なにもない、時間や空間の概念すら存在しないこの『虚無』の中で、ある少年が思考を繰り返してゆく。


少年はゆっくりと瞳を開く。その『深淵』のような瞳には光すら映らず、ただ静寂だけが横たわっている。彼は『虚空』へ手を伸ばし、五指を緩やかに握りしめた。まるで、形のない『虚無の欠片』を掴み取ろうとするかのように。


ここは──どこ──自分は──何者?


そうだ──ここ──時間も──空間も──概念すら──存在しない。


俺は──あれから──ずっと──ここに──いた。


彼はわずかに首を傾け、遠い時空から響いてくる残響に耳を澄ませる。沈黙という名の重圧が全身を貫くが、彼はただそれを受け入れていた。


そういえば──あれから──どれくらい──年月が──過ぎたか?


あいつらは──元気──だろうか?


願いは──叶えただろうか?


願い──それは──誰もが生まれながらに持つ本能であり──この世界を駆動させる目標だ。「何かをしたい」──「何かを手に入れたい」。人によって──その願いは──どんな形にも成り得る。


虚無の空間に、極光のような幾千の糸が浮かび上がる。それは衆生の「願い」だ。彼の指先が、執着に燃える赤き糸に、そして自由を求める白の糸に触れる。だが、その光は触れた瞬間に泡沫のごとく消え去った。


空を飛びたいと願う者は──身に翼を穿ち──自由のままに何処へでも行ける。身体的な病を癒やし──あるいは病そのものをこの世界から根絶すること。


その些細な『選択』一つで、『未来』は無数に分岐する。人の選択によって、それは悪意に満ちた絶望の『未来』にも、幸福に満ちた楽園の未来にも、辿り着く可能性が充分にある。


だが──俺には──「欲」がない。


彼は俯き、透き通るような己の両手を見つめた。本来、心臓が脈打つはずのその胸の中心には、今や極小の『ブラックホール』のような「無」が鎮座し、あらゆる感情の揺らぎを静かに飲み込んでいる。


何を欲しがるのか──生きる意味は──どうして生まれたのか──何のためにこの世界に来たのかさえも分からない。


人にとって──ごく当たり前のはずの──感情が、──なぜ──俺には──欠けている? 家族も、──友人も、──ましてや愛する人も──いない。身長も、──体重も──顔も──他の人間と──大して変わらないというのに。


その──『欠落の理由バグ』を──知りたくて──俺は──世界を巡る旅を──始めた。様々な人に──出会い──数多の光景を──見てきた。だが──答えは今も──『不明ヴォイド』のままだ。


理解しようと──試みたが──『論理的処理』が──不能だった。


どうして人は──ただ一つの『願い』に──あれほどの意地を──張り──執着できるのか。そのためになら──他人を傷つけ──自分自身さえも──顧みない。『苦痛』なのは──分かっているはずだ。実現は──『不可能』だと──状況に示されている。どうせ──『最後の結末』は──同じ結果──だというのに──それでもなぜ──諦めない?


彼は不意に腕を振るった。静止していた空間がその動作によって激しく波打ち、『虚無の裂け』目から、欲望が渦巻く下界の断片が露わになる。


けれど──そんな彼らを──嫌うわけ──ではない。


多くの──『選択肢(願い)』が──あるからこそ、──この世界は──挑む価値が──ある。どれほどの──時間が──かかろうとも──それを叶え──そして他者に──証明する──自分の『願い(存在)』は──間違っていないと。


ある者は──『運命の奴隷』に──ならないため、──『理想』を求め──『願い』を──欲する。


ある者は、──『復讐』という──『煉獄の道』を歩み、──身を滅ぼしても、──ただ『家族』との思い出を──守りたかった。


ある者は、──『主の救済』を望み──、世界の人々を──苦しみから──解放し、──『自由』という──『楽園』へ──誘おうとする。


ある者は、──『無知』でありながらも、──『知恵』を求め、──無くした『友』に──『真実』をさらけ出す。


ある者──『王』であり──『民』である、──世界の『不公平』を──知り──なお──『気功』で──世界の『均衡』を──定める。


これは、そんな人と人の『願い(存在)』が激しくぶつかり合い、『欲望』まみれた『虚妄な世界』に「理想と意味」を打ち立てる物語だ。


少年は立ち上がり、足元の虚無に黄金の漣が広がる。彼は両腕を広げ、その深邃な眼差しで、こちら側の魂を見透かすように告げた。


さあ──もう一度君たちの願いを──俺に語るといい。


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2026年1月16日 16:00

ウィシッユコレクター アスタ. 天ユ @ASTENY_996

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