第41話 合同自主トレ
中浜率いるライガースがハワイへの優勝を楽しんでいる間、智久は自身の故郷でもある神奈川の市民グラウンドで自主トレを行っていた。
今年、智久は中川に後輩でもあり昨季のシーグルズのドラフト一位で入団した
智久は仲里にオールスターでのよしみか、自主トレに誘われいたのだった。
キャッチャーの中川に若手で伸び悩んでいる新田が集められている。
中川は智久の相方としてノーノーを記録、しかし成績はいまいちだった。
新田も同じく高校生ながらも即戦力として期待されたが、防御率が5点台と正直に言えば期待外れだった。
そんなこんなで集まったメンバーが練習をするのだが......マイペースの仲里に感覚肌の新田がいるので群れずに基本は個人で練習をしていた。
ひとりが中川に投げている間に他の二人はランニングや柔軟、投球術など地味なことを反復する、そんな日々だった。
「はあはあ。新田、なんで、そんなに体力、あるんだよ.......」
息も絶え絶えに智久は疑問を呟く。
ランニング後、膝に手をついている智久とは違い、新田は軽く息が上がっているだけ。仲里も年齢を感じさせない体力オバケだった。
「うーん、僕からしたら坂井先輩がその体でローテ守れてる方が疑問すけどね」
「先発は中六なんだからあんまり疲れない、のかな」
「なわけ無いでしょうよ」
新田が呆れたように呟く。
たしかに智久の体は特異だった。
疲れが異常に溜まりにくく、回復が他の投手と比べて圧倒的に早かったのだ。
「次、柔軟行くか」
新田の背中を智久は軽く押す。
しなやかな体はどこまでも沈み込むようにいくらでも押せた。
だが、智久はそれ以上だった。
脚は180度を超え、骨盤もしっかりと地面についている。
肩肘も無駄な筋肉は落とされており、引き締まった体は硬いようで柔らかくスポーツ選手の中でも理想の肉体に近い。
「えっぐ......」
ただひとつ欠点をあげるとするならば、体重が足りないことだろう。
回転数や多種な変化球でカバーしているが150に満たない球速はプロでは遅い部類だった。だからこそこの自主トレで球速向上を目標として掲げている。
「ありがと、そろそろ仲里さんも終わりっぽいね」
仲里がマウンドに立ち、中川にクイックで投げ込んでいる。
クイックでも球速もキレも変わらない仲里にふたりは見惚れていた。
そうして五球ほど投げ込んだ後に仲里は振り返る。
「投手の本領......発揮する場面は、ランナーがいるとき......完全試合いがいは、絶対にランナーを出す......だから重要」
そう言って再び投げ出す仲里。
少ない言葉ながらも的確に修正点を伝える、そのたびにふたりは直してきた。
そうして三人は必死に練習を続ける。
今年勝ちに、結果に恵まれなかったからこその気概。
来年の飛躍のために日没まで力を振り切るのだった。
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