第6話 雨の蝶
こんな夢を見た。
雨の降る夜さり、私は廃墟になった遊園地を散策している。数百年前に運営をやめた遊園地であるというのに、観覧車とメリーゴーランドだけが稼働している。私は遠く流れるキラキラした音楽に背を向け、遊園地の深部に向かっていった。
トランポリンのコーナー、ジェットコースター、高所から急に落ちてくる絶叫マシン……しんとした遊具の死骸を横目に見ながら、どんどんどんどん進んでいく。
私は遊園地の最奥まで来た。何もない茂みである。導かれるように其処へ行くと、青く光る蝶が一匹蹲っていた。私はしゃがんで蝶を掬い上げた。蝶はすぐに飛び立ち、雨粒を含んだ鱗粉をきらきらと振りまきながら、何処かへ行ってしまった。
私は――雨の遊園地に独り立ち尽くす。蝶の飛んでいった方向を、何となく眺めている。
そういえばこの遊園地は、数十年前に取り壊された近所の遊園地だった――と気づいた時には、蝶はもう雨と夢の向こう側へと消えていた。
私は今日も、次元の間から酔歩して飛び出た蝶を夢む。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます