近くて遠いどこかの話
うみの蜂
第1話
海は静かで、無数の太陽の破片をきらきらと纏い波が揺らめいている。
潮の香りは、どこまでも続く海の奏でる静かなメロディーのように、路地から路地まで流れ、海の歌をハミングしながら唄っているようだ。
港に漁船が帰ってきた。カモメたちは、その様子を上空から見守り、けたたましい鳴き声を響かせていた。
観光船が波に揺られながら静かに港に停泊している。その静けさを破るように、漁船が帰港し、カモメたちが一斉に飛び立つ。
都心から1時間半で行けるこの港町は、レトロな街並みと新鮮な海の幸を求めて、多くの人達が訪れる手軽な観光地だ。魚市場や産直マーケットは連日たくさんの人で賑わい、特に昭和レトロな路地裏は、タイムスリップしたかのような懐かしさを感じられると評判だ。
魚のアラをもらって生きている猫たちは、街の至る所で自由気ままに過ごしている。番犬の役目をすっかり忘れてしまった犬たちは、日当たりの良い場所で昼寝をしている。
この町では、時間がゆっくりと流れる。今日も快晴の空に、トンビが悠々と弧を描く。
港町は、今日も平和だ。
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