第一部:椿ノ首⑬

「警察の調べでも、どこにもなかったと聞きました。そして、傷口には錆もついていなくて、刀が使われたわけでもないと。誰かが首の肉を引きちぎったんだと……」


 うっ、そう言って藤郎は口元を抑える。

 灯心もまた同じ気持ちだったが、ふと尋ねてみた。


「なかったのは、首の肉だけだったのかね」

「ああ、そう言えば、舌もなかったようです。舌の先の方が少し……」


 ううと藤郎は呻いて、トイレの方へと走って行った。

 灯心は確信した。

 すべてが、彼の中で繋がる。

 何かの悪意が死を招いたとしか思えない。

 そして、それは「ヤツ」の復讐なんだと冠した。

 



 数日後、新聞は大々的に、そのニュースを伝えた。

 後の数日間、テレビでも何度も取り上げられるニュースとなる。

 暴力団のトップであった赤木アツシと内縁の妻・蒼子の三人が他の暴力団との抗争によって命を落とした。元々、無理やり派閥を分断させて組を作ろうとした男だ。その末路には相応しいのかもしれない。

 また、同じ日、ひっそりと麻薬密売人の緑川も死んだ。こちらは組織などの関係ない、本当の事故であり、ベランダから落ちてきた鉢に当たっただけのことだ。

 でも、それが偶然か、ただの運命か。

 普通の人間には、そんなことは分からない。

 



 でも、灯心には分かった。

 多くの人間を恨み、殺し――師からは、自分の奪われたものを取り返した。

 


 これは、アイツの復讐である。

 怨嗟の炎に身を窶す、堕ちた椿の復讐なのだと。

 ハナセバナル、

 ハナセバナル、

 


 噺せば、生る――

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