ep.5

おれは何とかならないかと、愛香さんに持ち掛けた。


「きゅ、救急車」


「無理、でしょ…人間てたしか30%で死ぬ、のに…これ、絶対それ以上」


「ま、窓。この部屋、窓は。窓から逃げて…」


「窓、ない。ここで籠城する、つもりで…。あいつ谷橋くん狙ってた、から…燃やすの、早まっちゃった」

力なく笑う愛香さん。


「はは、今日はもう解散しちゃったから…メンバー達ももう、お酒飲んで寝てる、だろうし…」


「なんとか……なんとか、ならないんですか……」


スマホを取り出す。


救急車…いや消防車か?電話をしようとするが、この部屋だと圏外になる仕様みたいで、繋がらない。


深く息をしていた愛香さんの呼吸が、早く、浅くなっていく。




待ってくれ…いかないでくれ。




すると、俺のスマホから通知音が流れた。


(圏外、なのに?)


開いてみると、愛香さんと出会ったマッチングアプリ。



「綻び」という人物からのスキ通知だった。



指の慣性で思わず「綻び」をタップする。


画面に表示される、見覚えのあるコード達。


(……これ、先週俺が突貫工事で作った案件の)

たしか「合同セルフパブリッシング」をする、ノベル…何だけ…イベントのネット同時配信のシステム…なんだ?


スパイ――。



***



「愛香さん。これ、見てください」


仰向けになり天井を見ていた愛香さんの目の前にスマホを出す。


「俺たち…なんか書かれて、ます」


「……うわ…え、あ」


合っていなかった焦点が、次第にスマホの中へ注がれていく。


「で、でもこれ…ハッピーエンドって…」


「この花雲とかいう作家のサイト、乗っ取っります」


「は…どうせ…そんな小説…偶然、同じなだけでしょ」



首をゴロンを俺の反対側に向けて顔を愛香さん。


動いた衝撃で火傷が傷んだらしく顔を歪める。



俺はスマホで…出来る範囲までやってみようとタップし始める。



愛香さんか小さく言った。



「ねぇ。そういうのって、書き換えると最悪、世界滅んじゃうの。知ってる?」



反対側を向いているので顔は見えないが、どうやら涙を流しているようだった。

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