SPY×BANKER
花雲ユラ
ep.2
Noveljam2025というイベントに出た際の作品の続編です。
BCCKSにて発売中。
https://bccks.jp/bcck/182009/info
データ版275円
紙版800円+送料275円
※今記事に暴力的、性的行為を連想する記載があります。全年齢対象作品ではありますが、ご了承の上、お読みください。
「はい、移住決定ね♡」
そう微笑むと、長い刃物を脇に置き、俺の膝に馬乗りになる愛香さん。
「ごめんねえ? 力の加減間違えて首切れちゃったあ」
言いながら俺の首をつつつ、と舐める。
先ほど空いた穴を愛香さんの唾液が埋めていく。
「ンー? やっぱまだ、脂質が足りてないねえ」
「し、ししつ?」
「さっきのバーニャカウダ、あんま豚肉食べてなかったでしょ? もっと油取らないと身体、動かないからね? MCTオイル⋯⋯コーヒーに垂らして飲んで?」
言いながらドアの脇の隠し窓を開け、パスコードを入力して施錠を解除していく愛香さん。桁数長ええええ⋯⋯。
「ああああ、あの。一生出られないっての、は⋯」
「⋯⋯君次第かなぁ⋯。信頼できるレベルに引き上がってくれれば外出許可出来るけど⋯⋯あのさ?」
「ハイ」
「残念ながら、私大抵の嘘は見抜けるんだよね。たぶん君が誤魔化してもすぐに分かる。だから、逃げたいんだな、私の事怖いからか、なーんか媚びてくるなって思ったら⋯」
「⋯⋯ハイ」
「どうするだろう⋯? 分かんないな。だから、とりあえず君には誠実で⋯いて欲しいな」
そのままリビングへ連れて行かれ、首を消毒されてからガーゼを張られる。
ぐるぐると巻かれた包帯で少し息苦しい。
***
やがてホットコーヒーが運ばれてきて、俺は敢えて躊躇せずに口に運んだ。
(上に浮いてるのはMCTオイル⋯自白剤、とかじゃあ、ナイ⋯はず)
俺の表情をみてとった愛香さんは、にひひ、と笑って隣でアイスコーヒーを口に含んだ。
「まだ何も、秘密は握られてないはずだからね。今のタイミングで自白剤を使うなら、君が敵さんからのスパイかもって疑ってるなら使うけど。流石にあんな素人丸出しの身のこなしで、スパイかも、は無いから」
俺の手を取る愛香さん。
反対の手には俺のスマホ。
俺の指で指紋認証ロック解錠すると、中身をつらつら眺めていく。
「ねー⋯なに? この履歴⋯」
映画館の近くの、雰囲気の良いバーだの、ラブホテルだのの履歴を見られてしまったらしい。
身体中に羞恥の熱が籠もる。
「や⋯だって! ひ、久しぶりで⋯⋯嬉しくて」
「あははは。全部仕組まれてたのに⋯!!」
笑い転げていた愛香さんは、そのまま天井を見上げながら呟く。
「イイネ。対する君は、そんなにうぶで」
「し、仕組まれて⋯た?」
「そーーー! 美味しくないポップコーンも、店側からの予約キャンセルも⋯⋯なんなら君が自分の家を断る事も、全部計算済み。だって久し振りに『普通の女の子』がしたかったんだもーん」
俺の中の愛香さんは、銀行に勤める「普通の女の子」だった。
でも、今さっきのあの部屋で、一転した。
まさかあんなスパイのようなアングラっぽい世界の住人とは。
「⋯⋯あの、銀行重役の⋯パパ、という、のは⋯⋯?」
「パパぁ? あぁーーー!! あの人はねえ、スケベ心満載で近づいてきたから弱み握って今の支店に斡旋してもらった⋯⋯身体の関係が無いパパ♡」
胸の前にハートを作って笑ってみせる愛香さん。
を引いた笑いで相槌を打つ俺。
(つまりは、血の繋がり以前に心の繋がりも無いってことか⋯⋯)
***
「君はプログラマーの素地があるから。たぶん鍛えれば戦力になるんだよねえ」
何処まで信じるべきか思案に耽っていると、愛香さんは食器をゴミ袋に突っ込んでいく。
バーニャカウダが載っていた黄金の皿も、だ。
「ええええ、すて、捨てちゃうんですか?!」
「イヤだって、もう使わないし」
「使わないんですか?!」
「料理したいときは都度都度買うようにしてるんだ⋯ネットスーパーの食材と一緒に、アマゾンで買っちゃうの。案外早く届くから、朝注文すれば、夜には届くのよ」
「⋯⋯へえ」
これからどんな生活が始まるんだ? と思っていたけど、案外プログラマー時代と大差ないのかも知れない。
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