スライムを1万回倒さないと出れない部屋で、いつの間にか世界最強の剣聖になってました!

沢田美

第1話 プロローグ

 もしこの人生をやり直せる機会が訪れるのであれば、俺は今度こそ、退屈じゃない人生を送りたい。

 そんなことを会社の屋上で心の中で呟く。

 自販機で買った缶コーヒーを飲み、俺はため息をつく。


「結局、毎日同じことの繰り返しか……」


 ふと俺の今までの人生を振り返ってみる。

 小中は友達もそこそこできて、高校では彼女はできなかったけど、それなりに楽しかった。

 適当な大学に進学して、そのまま適当な証券会社に就職……。


「退屈だな」


 趣味なし、彼女なし、好きなモノは……最近ハマってる〇〇しないと出れない部屋系のマンガくらいか。

 我ながら、つまらない人間だな。


「田中先輩〜!」


 屋上の扉が開き、聞き馴染みのある声が聞こえる。

 振り向くと、そこには去年俺の下で働くことになった部下がいた。


「松下、どうした?」


「いやー、今日ちょっと悩み相談がしたくて! 1杯どうですか?」


「また付き合えるかも分からない女の話か?」


「――はい!」


 やれやれ、俺はカウンセラーじゃねぇんだぞ。

 そんなことを思いながら、持っていた缶コーヒーを飲み干し、松下の肩に手を置いてゴミ箱へ缶を捨てた。


 ◇


「それでー! 聞いてます、先輩!?」


「あぁ、聞いてる聞いてる。てかお前、飲みすぎ」


 顔を真っ赤にして酔っている松下。

 そんな彼の話を聞きながら、自分も酒を飲む。

 恋愛相談、上司への愚痴、将来への不安——聞いているうちに、少しだけ自分の学生時代を思い出した。

 俺もあの頃は、もっと色々なことに悩んでいた気がする。


「店主! お会計いいですか」


「あいよ!」


 ある程度、松下の話を聞き終えた俺は会計を済ませる。

 ベロンベロンに酔った松下にタクシー代を渡して、彼を運転手に託すと、俺は一人で終電に間に合うように駅へ走った。


「セーフ! 間に合った、間に合った」


 そんなことを呟きながら俺は、駅のホームで電車を待つ。

 ここ最近、退屈な時間が増えた気がする。

 週末……アニメでも見るか。

 そんなことを考えていると、奥の方から電車が近づいてくる。

 ホームにいた数人の人達も前へ出てくる。


 さて、早く帰ってまず寝るところからだな。

 そう思った瞬間だった——背中から強い衝撃を感じた。

 まるで——誰かに、意図的に突き飛ばされたような。


「――は?」


 スローモーションのように、周りのものがゆっくりと流れていく。

 線路へ突き飛ばされた俺の目と鼻の先には、迫りくる電車。


 死ぬのか、俺。

 不思議と、恐怖も後悔もない。

 ただ、こんな終わり方かと思うと——少しだけ、虚しいな。


「――ハハッ、ようやく……」


 そう呟くと同時に、全身に強い衝撃が走る。

 痛みより衝撃が先に来た。

 体の中がぐちゃぐちゃになる感触を感じながら、俺の意識は闇に沈んでいく。


 もし来世があるなら——

 もっとマシな世界で、冒険と楽しいスローライフを送ってみたいな。

 それが、俺の最後の願いだった。


あとがき。

諸事情で一時的に作品を消してました。

また改めて書いていきますのでよろしくお願いします!

面白いと思っていただけたら、ブクマ、評価の方よろしくお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る