『社畜コンサル、異世界でも最速で事業再建して王に成る』

深夜

第1話 ブラック企業で死んだら、領地経営の始まりでした。

朝8時、都心の高層ビル。


ガラス張りの会議室で、桐島誠(きりしま・まこと)はパワポを指し示しながら、プレゼンを続けていた。




「――よって、A社の中期戦略は既存事業の売却と、新興国市場への集中投資。KPIはQ4までにEBITDAプラス15%を目指す方向で調整済みです」




背広をパリッと着こなした幹部たちが、眠そうな顔でうなずく。




(寝てんじゃねぇよ……こっちは3徹だぞ)




心の中で毒を吐きながらも、顔には一切出さない。それが、外資系戦略コンサルの流儀だ。




 




桐島は大手外資コンサルファームで働く戦略コンサルタント。


成果主義の塊のような職場で、月400時間以上働き、成果を出せなければ即クビ。


プロジェクトが炎上すれば寝る間もなく対応。


提案資料の修正は100回以上。


休日?なにそれ?食えるの?




そんな“地獄”のような日々を数年繰り返し、気づけば年収は2,000万円を超えていた。




だが――




「……ん、ぐ……っ」




突如、激しい胸の痛みと眩暈が桐島を襲った。




「桐島くん?大丈夫か?」




誰かが言った気がしたが、音が遠い。




(ああ、やっぱり。限界……だったか)




倒れこむ瞬間、桐島は妙に冷静だった。




(でもまあ、30代で死ぬなら……悪くないかもな。KGI、達成したし)




 




――そして。




 




◆ ◆ ◆




 




「……起きたか?」




見知らぬ天井。


見知らぬ男の顔。




(……病院じゃ、ない?)




木造の天井。ロウソクの明かり。妙に粗雑なベッド。




(セットの悪い時代劇か……?)




男はひげ面で、いかにも荒くれ者という風体。




「お前、森で倒れていたんだ。死んだかと思ったぜ」




「……ありがとうございます。でもここはどこですか?」




「あ? イシュラート領、ラル村だよ。お前、まさか記憶まで飛んじまったのか?」




(イシュ……ラート?)




その瞬間、脳裏に大量の“記憶”が流れ込んできた。




自分の名前。


自分の過去。


この世界の地理、政治、魔法のこと。


そして――この身体の持ち主が持っていた人生。




(転生した……ってことか?)




桐島誠は、どうやら死んだあと、異世界の身体に転生していたらしい。




新しい名前は「マコト」。


かつては奴隷同然だった孤児。今は小さな村の補佐官らしい。




(……経営も、魔法も、武力も。全部崩壊寸前の領地か。なるほど)




にやりと、口元が緩む。




(ブラック企業で鍛えたこの脳みそ、使いどころが来たな)




 




「まずは、現状分析からだ」




 




――コンサル脳が、異世界を最適化する。




桐島改め「マコト」の、領地再建ストーリーが今、始まった。

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