妖怪少女とのハチャメチャ生活?!

第1話 鬼を名乗る美少女


 目の前の白米にがっつく勢いで貪る少女。

 茶碗の中の米はすぐに無くなる。


「おかわりぃ!」


 満面の笑みで目の前の少女が茶碗を差し出してくる。僕はそれを見て震える声で言った。


「勘弁してくれよ……。もう"20杯目"だぞ…」


 なぜこんな状況になっているか。

 それは数日前の出来事に遡る―――。



 ―――――。



 ピンポーン♪



 仕事から帰ってきた俺の元に一つのインターホンの音がけたたましく鳴り響く。


「誰だよこんな時間にぃ」


 僕はなんとか重い腰をあげて玄関まで行き、扉を開ける。


「こんばんはぁ」


 扉を開けるとそこにはまだ中学生くらいで背の小さい女の子がニコッとした表情で立っていた。

 

 あと、なぜか紅い着物を着ている。


 俺はとりあえずドアを閉める。


 だが、すぐにインターホンが鳴り響く。

 僕は扉を開ける。


「こんばんはぁ」


 さっきと同じニコッとした表情ど少女が同じあいさつをする。俺は再び扉を閉める。


 するとガシッと閉めようとした扉が誰かの手で遮られる。


「ちょっとぉ! なんで閉めるんだよ! 酷いじゃないか!」


 扉越しからそんな子供っぽい大きな声が聞こえてくる。


 そして、俺が抑えてるのにも関わらずその少女はすごい勢いで扉を強引に開けた。


 その勢いで突風が巻き起こった。


 (え? 何この子……こわ……)


 最初に感じたのは純粋な恐怖だった。

 いきなり知らない子がきていきなり扉を破壊する。恐怖でしかない。


 だけど、その恐怖の対象は小さな女の子。

 紅い髪に小柄な身体。しかも着物を着ている。


 俺はサッとスマホを取り出して電話を掛けようとする。


「何してるだい?」



「電話」  



「誰に?」



「警察」



「やめてくれぇ!」


 少女が今にも泣きそうな顔で飛びついてきた。


 服を掴んですんごい勢いで引っ張ってくる。


 ドアを軽く破壊するほどの力なのだ。服なんて脆いものを引っ張ったら当然――、



 ビリビリビリッ



「あっ……」


「あっ……」



 俺と少女のそんな間抜けな声がほぼ同時に聞こえた瞬間、俺は上半身半裸状態となってしまった。


 「え、あっ……」


 少女は俺の顔と半裸となった部分を交互に見ながらしどろもどろとする。

 

 そして、次の瞬間――、


「きゃあああああぁ!??」


 少女の甲高い声が轟くのだった。



 ――――



 しばらくして少女が落ち着いたところで、俺はとりあえず少女を家にあげる。


 少女は駆け足で家を上がっていく。

 

 言動、見た目は完全に子供の女の子だが、あの怪力だけはなんだろうな。


 俺も扉にカギを掛けてリビングに戻る。

 そこにはリビングに置いてあるソファの上で楽しそうに飛び跳ねる少女がいた。


 俺は少女の首の服の裾を掴んで宙づりにさせながら運ぶ。


「うわ! はなせぇ!」


 少女はまだ堪能したりないのかジタバタと暴れだす。


 改めて話す空間を整い、俺は少女に事情もろもろを問うことにする。


「それで、君は誰だ。なんで俺の家に来た」



「ふっふっふっ」


 俺が問うと、少女は腕を組みながら不敵に笑った。

 子供が見栄を張ろうとしてるようにしか見えないが、話が進まないので黙っておいた。


 そうして少女は自分の驚くべき正体を名乗った。


「聞いて驚け! 僕は"鬼"だ!」



 腕を組みながら仁王立ちでそんな事を言った。

 俺はどう反応して良いか分からず、呆然とする。


「ふっふっふっ、驚いているようだね? まぁ、当たり前か、なんたって鬼なんだからな!」


 

「鬼って、あの鬼か? 日本妖怪の一種の……」



「人間達にどう見られてるかは分からないけど、僕は正真正銘の鬼だよ!」



 少女は腰に手を当てながら「ふふん♪」と鼻息を鳴らす。


「ふ〜ん。鬼とはこりゃまたすげぇな。初めて見たよ」


 俺は改めて鬼を名乗る少女をまじまじと見る。

 鬼特有のツノや金棒は見当たらない。見た目はほんとに普通の女の子だ。


「自分で言っておいてあれだけどさ。案外すんなり信じるんだね?」 


 少女が意外そうに聞いてきた。

 まぁ、たしかにいきなり押しかけてきた女の子が「鬼だ!」と言っても普通は信じない。


 だけど、俺は見てしまっている。

 俺の服や家の扉を簡単に破壊するこの少女の人間離れした怪力を……。


「まぁ、あんな怪力を見せられちゃあな。お気にいりの服も見事にバラバラだし……」



「あはは…、ごめんよ。つい興奮すると力の制御がね……」



「それで? 君、名前は?」


 一番肝心な事をまだ聞いていなかったため、普通に名前を窺う。だが、少女はきょとんとした様子で答えた。


「名前? 僕は鬼だと言っているだろう?」



「あぁーそういうことじゃなくてだな。例えばだぞ? 俺の名前は"神楽木かぐらぎ しん"って言うんだ。君にもそういう名前はないのか?」



「ないよ?」


 無いらしい。

 名前がないといろいろ不便だな。


「しょうがないな。名前がないと呼ぶ時不便だから仮の名前を付けていいか?」


 俺が聞くと少女は頷く。

 俺は顎に手をやってしばし考え込む。


(着物、紅い髪……、紅葉こうよう……)


「『紅葉もみじ』なんてどうだろう?」


 俺は考えたその名前を口にした。


「もみじ?」



「紅いって漢字に葉っぱの葉で"紅葉"。君のその紅い髪がそれに似ているからね。適当すぎたかな」



 俺は少し不安げに微笑みながら窺う。

 だけど、俺のその不安とは杞憂に少女はキラキラした目でその名前を連呼していた。


「いいねそれ! 僕の名前は紅葉もみじにしよう!!」


 どうやらお気に召してもらえたらしい。

 少女もとい紅葉は興奮した様子で言った。


 

 俺はこの日、伝説の妖怪(少女)との謎の出会いを果たしたのだった。







【あとがき】

現在別の作品に本腰を入れてるのですが、今回気分転換も兼ねて新作を公開させてもらいました。


前向きに検討はする予定ですが、正直まだ続きを書くかは未定です。











 






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