第3話 文化祭の企画




「それでは一年A組の文化祭の出し物は『占いの館』にします」



 学級委員の女生徒がそう宣言した。



 占いの館なんてただの詐欺じゃないか。



 俺は内心そう思った。


 俺は「占い」を信じてない。

 それだけでなく「神様」や「悪魔」などの存在も信じない。

 神様は必ずしも人間を幸せにしてくれるわけじゃないし、悪魔も人間を必ず傷つけるとは思わないからだ。


 よく父さんに言われたものだ。『真人。この世で一番怖いのは生きた人間だ』ってな。


 父さんは殺し屋ダークナイトとして仕事をしている。

 人間を殺すのが商売の父さんに言われると言葉に重みを感じる。


 そう神様に祈ったって悪魔を崇拝したって人間は死ぬ時は死ぬのだ。

 自分の身は自分で守らないとだし自分の愛する者を守るには強くなければならない。

 俺はそのことを父さんに教わった。


 そしてクラスの話し合いは終わり皆帰り始める。

 俺は同じクラスの美由紀と拓也と一緒に帰ろうと昇降口に行くと偶然隣のクラスの連中も話し合いが終わったようで吾郎と武と遭遇した。



「なんだ。吾郎も武も今帰るのか?」


「ああ。マサトか。クラスの出し物は決まったか?」



 吾郎がそう言うので俺は答える。



「占いの館だってさ。いろんな占いをやるらしい。まあ、中等生がやる占いだからたかが知れてるけどな」


「そうか」


「B組は何をするんだ?」



 俺が訊くと吾郎が黙り込む。

 よく見ると不機嫌そうだ。



 何か、吾郎の気の触ること言ったかな。



 俺がそう思ってると武が言いにくそうに言った。



「うちのクラスは女装喫茶だよ。男子生徒がメイド服着てカフェをするんだ」


「女装喫茶? マジか?」


「うん。で、女生徒から吾郎はきっと女装が似合うから人気出るって言われて吾郎は不機嫌なんだよ」



 なるほどな。確かに吾郎は美形で女顔に近い容貌だ。

 中身はバリバリの男だが外見なら時々女に間違えられることもある。

 たいがいそう言って吾郎に絡んでくる奴らを吾郎は半殺しにするけどな。


 吾郎は頭も良くて基本的に女性には優しいが怒らせると手段を選ばない冷酷な一面を持っている。

 吾郎を見てると人間見た目で判断してはいけないと俺も思うぐらいだからな。



「まあ。吾郎。そんな怒るなよ。適当に客なんてあしらってやればいいだろ?」


「マサトの方が女装が似合うと思うけどな」



 吾郎は素っ気なく俺に言う。

 俺も自分で言うのもなんだが世界を股にかける結婚詐欺師「礼美」を母に持つせいか世間一般的に美形の部類に入る。

 吾郎程じゃないが俺もこの顔のおかげで半グレにいちゃもんつけられることは多い。


 美形に産まれたことを感謝するべきかしないべきか悩むこともあった。

 少なくとも俺が初めて殺した相手は幼い俺にいたずらしようした変態だった。

 まあ、その時には俺は父さんから殺しの技を教えられていたからそいつを返り討ちにしたが。



「とりあえず皆で帰るか。まだ時間あるし、たまにはゲーセンでも寄ってくか?」


「賛成。このまま帰っても不満だけが残りそうだしな」



 吾郎がそう言ったので俺たちは繁華街の方に歩いて行った。

 俺たちがゲーセンで遊んでいるとチャラチャラした高校生ぐらいの男たちが近づいてきた。



「よお。お前たち中坊だろう? お兄さんたちに少し遊ぶ金分けてくれないかなあ?」



 その中のリーダーらしき人物が俺に声をかける。



 なんだ、こいつら?

 俺たちは今ゲームで忙しいんだから邪魔すんなよ。



 俺は財布から10円玉を一つ取り出すとそれを床に落とす。



「金が欲しいならそれ拾って帰りな」



 当然ながらその男は顔を真っ赤にして怒鳴る。



「おい!クソガキ!なめてんじゃねーぞ!!」



 あ~、はいはい。こういう輩の反応はいつも一緒だよねえ。



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