第2話 連続不審火のニュース



 次の日の朝。俺は美由紀より早く起きて朝食を作る。

 美由紀も料理ができないわけではないが俺が食事を作ることが多い。

 特に美由紀は朝が弱いのでほぼ朝食は俺が作るのがお決まりだ。


 俺は朝食の準備ができると美由紀を起こしに二階の寝室に行く。

 美由紀はまだベッドで寝ていた。



「美由紀! 起きろ! 遅刻するぞ!」



 俺は美由紀の布団を引き剥がす。



「う~ん、おはよう、マサくん」



 美由紀は目を擦りながらようやく起きた。

 そしてパジャマのまま一階に降りて朝食を食べるためにテーブルに着く。

 俺がテレビのスイッチを入れると朝のニュースが流れてきた。



『昨夜、ゴミ捨て場でゴミが燃える火事がありました。付近では最近不審火は続いており警察で関連を調べています』



 テレビのアナウンサーの声と同時に燃やされたゴミ置き場の映像が流れる。



「あれ? ここってうちの近所じゃない?」



 美由紀はご飯を食べながらテレビを見て俺に言う。

 テレビの映像を見ると確かに見覚えがある。

 俺の家から500mくらい離れた公園の近くのゴミ捨て場だ。



「確かに近いな。連続不審火ってことは放火魔がいるってことか?」



 俺はおかずの鯵の開きを食べながら話す。



「そうね。今まではゴミ捨て場が燃やされているけど、放火魔ってだんだんエスカレートするって言うじゃない? 怖いわ」


「そうだな。でも放火なんて自分に自信のない奴がやるもんだ。自分で物事を解決できない弱い奴が自分を強い人間だと思わせたくてやる非道な人間だ」



 俺はそう美由紀に答えた。


 よく「自分を馬鹿にした社会に復讐したい」とかの理由で放火をする奴は多い。

 俺からしてみれば放火なんて汚い手段を使うんじゃなくて堂々と自分を馬鹿にする奴らと戦えばいい。

 戦う根性のない人間が自分より弱い人間を標的にするのだ。



「フフ、マサくんに『非道な人間』って言われるなんて放火魔は本当にろくな人間じゃないのね」



 美由紀はご飯を食べながら俺を見て笑う。


 まあ、俺も人殺しの人間だから普通の人間から見れば『非道な人間』と言われても仕方ないかもしれない。

 けれど俺だって見境なしに人を殺すことはしない。

 生きていても人に迷惑しかかけないクズ野郎とか俺に喧嘩を売ってきた人間とか。

 ちゃんと俺なりに理由はある。



「それよりもうすぐ文化祭だろ? クラスの出し物決めるの今日じゃなかったっけ?」


「そうよ。今日の午後に皆で話し合いがあるわ」


「俺はあんまり学校行事には興味ないんだよなあ」



 俺は小等生の頃から浮いた存在だったから学校行事があってもあまり真面目に参加した覚えはない。



「マサくん。中等生になったんだから集団行動にも従わないとダメよ」



 美由紀はまるで俺の母親のように話してくる。



 まあ、美由紀の俺に遠慮せずに言いたいこと言ってくれるところは気に入ってるけどな。



「んじゃ、早く準備しないと学校遅刻するぞ」



 俺は自分の朝食をたいらげると美由紀を急かす。



「待ってよ。今、準備するから」



 美由紀も朝食を食べ終わると制服に着替える。

 そして俺たちは二人で登校したのだった。




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