第2話

エターナイトの夜は、決して終わらない。星明かりが淡く降り注ぐ中、私たちアリアとレオンは、結晶の森の小さな住処で、新しい命を育んでいた。娘の名前はルミナ。生まれた時、彼女の肌は私のように青みがかり、目はレオンのように赤く輝いていた。この星の過酷な環境で、子供は珍しい存在だ。熱流の安定がなければ、命は芽吹かない。私たちの愛が、ルミナをこの世界に導いた。

しかし、平和は長く続かなかった。北極の火山が、再び異変を起こしたのだ。以前の噴火を制御したはずのレオンが、顔を曇らせる。「熱流が弱まっている。都市の気温が徐々に下がり始めているんだ」

私は不安を抑え、ルミナを抱きしめた。「また、極地に行くの?」

彼は頷いた。「今度は、単なる調査じゃない。火山の核に異常がある。俺のチームが、修復を試みる」

クリスタリアの街は、ざわついていた。温泉の湯気が薄くなり、結晶の森の葉がわずかに凍りつく。住民たちは、熱の守護者であるレオンたちに期待を寄せる。だが、心の波長を通じて、レオンの恐怖が伝わってきた。極地の深部は、溶岩の海。帰還は、奇跡に近い。

出発の日、私は森の端で彼を見送った。ルミナを背負い、星明かりの下で。「無事に帰って。ルミナが、父を待っているわ」

レオンは微笑み、娘の頰に触れた。「君たちを守る。それが俺のすべてだ」

彼の姿が闇に溶け、夜が深まった。日々が過ぎ、熱流の乱れは深刻化した。都市の外縁部で、凍死者が出始めた。私は採掘を続けながら、ルミナを育てた。同期した心が、時折、熱い鼓動を送ってくる。それが、希望だった。

だが、ある夜、心の波長が途切れた。突然の空白に、私は森を駆け巡った。「レオン!」

都市の監視所で、知らせが届いた。チームの通信が絶え、北極火山の噴火が確認された。熱流が逆転し、赤道に灼熱の波が迫っているという。凍えから、焼け死ぬ危機。住民たちはパニックに陥った。

私は決意した。ルミナを信頼できる友に預け、極地へ向かう。結晶の森の奥に、隠された古い道がある。祖先が使った、熱耐性の結晶でできた道だ。危険だが、レオンを救う唯一の手段。

旅は過酷だった。星明かりさえ届かない闇の中、熱気が体を蝕む。肌が焼け、息が苦しい。心の波長が、微かに蘇る。「アリア…来るな…」

「あなたを置いていけない!」私は叫んだ。

火山の縁に辿り着いた時、レオンは溶岩の淵で倒れていた。チームは全滅し、彼だけが生き残っていた。異常の核──火山の中心に潜む、未知の鉱石が、熱を乱していた。私は結晶の力で、それを砕いた。熱流が安定し、噴火が収まる。

レオンを抱え、帰還した。傷は深かったが、心の絆が彼を癒した。クリスタリアに戻り、ルミナと再会。家族は、再び一つになった。

この星の夜は、試練の連続だ。だが、愛はそれを超える。星明かりのように、永遠に輝く。ルミナが成長し、次の世代へ。エターナイトの物語は、続く。

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夜星の恋 @KFGYN

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