高校ぼっちの俺、放課後にゲーセンで出会った美少女と仲良くなる。

さけしゃけ

第1話: 俺に原因があってぼっちになったわけじゃない

 文句のつけようもない完全な不運なんだ、俺がぼっちになったのは。


 無事第一志望の高校に行けることになって、期待に胸を膨らませていた今年の春。はやる気持ちを抑えながら高校の入学式に向かう途中、突然歩道に突っ込んできた乗用車に追突された。幸いにも命に別状はなく、後遺症も残らなかったが、4月は丸ごと病院で過ごしていた。


 5月に入り、始めての登校。彼らの話題は、もっぱらゴールデンウィークの予定についてであった。


 そんなわけでぼっちが確定しましたとさ。ちゃんちゃん。


 …人生おもんな。


 人生おもんななので最近は学校が終わった後に近所のゲーセンに直行して、クラスメイトの輪に混じれない自分という存在から逃避している。



–––––––––––––––––––––––––––––



「よっしゃあ!10連勝達成!!!」


 なんて、おもわず声にでてしまって、ハッと口を押さえる。幸いにも周りに人は少なく、自分の声もゲーセン特有の騒がしさにかき消されて周りにはあまり聞こえなかったようだ。


 今俺がプレイしているのはいわゆる格ゲー。最近では家庭用ゲーム機の普及によってゲーセンでプレイしているプレイヤーは減ってきたが、なんとゲーセンのなかで全国のプレイヤーと対戦できるようになっている。


(しかし、いくら初めての10連勝だからって喜びすぎたな…)


 なんて、自分で反省?していると、画面に『New Challenger』の文字が現れる。どうやら10連勝を達成したばかりでホカホカの俺に挑む愚かな挑戦者がいるようだ。


(…お?しかもこれは店内からの乱入者だな)


 右下には相手がプレイしているゲームセンターの場所が表示されるのだが、そこには俺が今現在プレイしているゲームセンターの名前が表示されていた。

 つまり、相手は筐体を隔てて向かいの方にいるということだ。…燃えてきた。


(よし、絶対にボコボコにして所持金を搾り取ってやろう…!)


 なんて、思っていたのだが。



–––––––––––––––––––––––––––––



「…嘘、だろ」


 目の前の画面には、俺の操作するキャラクターが膝から崩れ落ちている様子が映し出されていた。つまり、俺は負けたのだ。しかも一度や二度ではない。20回連続で負けた。近くにプレイしたいプレイヤーがいないのをいいことに、100円を注ぎ込み続けて2000円を失った。


 すでに財布の中に現金はない。硬貨はおろか紙幣もない。つまり、これ以上向かいに座るプレイヤーに一矢報いる方法などなく、この現実はつまり、俺の完全敗北を表していた。


(このまま帰るのも癪だ。向かいに座るやつの顔でも拝んでから帰るとするか)


 謎の対抗心を燃やして、わざわざ向かいの筐体に回ってから帰り道に向かおうとすると、そこには…


「…え、姫崎ひめさきゆい?」


 …俺の通う学校で知らないものはいない有名人、姫崎 唯の姿がそこにあった。

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