日常サティスフィクション
星凪莞
第1話 ノスタルロジック
蝉の声が鈴虫に切り替わる夜、世界に映る星が一瞬だけ青く光り輝くだろう。人々が花火が打ち上がったと錯覚する隙をついて地下の航空隊が水平線をバラ色の炎に変えてしまった!君が前の新月の日の朝に、森に向かって祈りを捧げたならば、秩序はここまで変わらなかった!懺悔を重ねてもう一度生命の証を受け取ったとき、3億光年離れたパラレルワールドが、イルカのDNAに基づいた新たな化石を作り直す。「さぁ、もうすぐ出番だ。」僕の目線は、呟く彼女の瞳に反射して彼へ。
化石は空の紫外線を頼りにして、治したはずのマカロニ症候群を帰納法で証明し続けた。意義は誰にもわからないが伝統だから、写実的な青紫の油粘土にあらかじめ植え付けておいた新聞紙の種は、左から6番目の木の根元に。発芽実現可能性調査を進めるためにちょっとずつ温めておいたスキルを解放して、夜がまるで瑠璃色のカプセルボートに。君との会話は不動だった時空を歪めてしまった!世界の秩序が乱れた隙に抜け出した魔法使いが、未来を七色に変えた。それは君が俯いていたから。
虹色の未来なんてまっぴらごめんだ!反抗期の彼は強がって飛び出した。天気雨に背を向けて、一昨日に向かって駆けた。二級河川の橋を渡る最中での何気無い動揺を曇天の夜空は見逃さなかった。彗星の如く現れた超新星爆発が降り注ぐなんて誤魔化しはもう誰にも通用しない。チップが足りないから、レポート用紙の価格を占いで決める必要性の議論における+αの余地は消えてしまった。「ねぇMr.カエル伯爵、リンゴ大臣は更迭されちゃうの?」
世論を駆け抜ける純情の指数があまりにも実態と乖離しているから僕は大切だと思い続けた彼のことも信じられなくなった。しょうもない二つ名がさもその人自身のすべてを表しているかのような風潮が嫌になった。かつて通り過ぎた謎の喫茶店には今はお目にかかれないとある国のコンフェセッド・パンプキンパイがあったらしい。落ち葉がふわり舞い散る木々の木漏れ日に感傷すらもしなくなった下旬の朝焼け、タコの頬杖が汗ばむ夕焼け。
ラッパーはいつだって誰の心にもいるよ、すぐに忘れてしまうけど。光が差す感覚に勘違いしてのぼせていたけれど、思い出のポッピング・ランデブーは芳醇な香りにすぎなくてそれ以上でもそれ以下でもなかった。目眩く高い崖から滑り落ちていく水、すなわち滝は例えば、眼鏡ケースを潜り込ませる。気怠さが鳴り出してしまう前に、いくつかの家具が間接的に輸送されていく。この街で冗句の一つも言えなかった彼に足りないものは想像を遥かに超えて身近にある。感情の昂りは時に頭のスピードを制御できなくなるし、不変の真実を飛ばしてしまう。好きという感情は不幸せだ。君が僕を好きにならないことは確定しているのに、世界の価値観が一変する妄想に逃げ込むから今日もその気になって生み出されたハリボテの箱庭の中に掘っ立て小屋を立てている。誰の声も溢れ出るような試験期間を早急に終わらせたおかげで、寝台列車は関与の有無を実証してくれる。解説はおろか解答すらも存在しない無意識ネガティブ方式地獄はワンダーランドへ。
3分後にカップラーメンができるシーンくらいしか確定していないこの先に思いを馳せたとて傷つくだけだ。ジャングルのカナリアが歩んでいく彼方に跪く。奏でるメロディーはなんて素敵なんだ!誰にも理解されない不敵な笑みを浮かべて、それはある人にとっては狂気じみた偽りのようだった。甚だしくも勾配が緩やかだったから免れたその苦い肉が砕け散って、あたかも十全だったと信じられていた扇風機が経年劣化で夏に使われないような気持ちになって、僕は目覚めた。
【あとがき】
心のなかにある心象風景を散歩してみる
空を見上げたり、木々のざわめきに耳を傾けたりする
紅茶を片手に夕暮れ時の街を見下ろしてみたりする
海の広さに恐れたり、川沿いの肌寒さに怯えたりする
何百年も前からあるような神社を探検してみたりする
まとわるような夏の輝きに一冊の思い出を添えて、公園のベンチに腰掛けてみたりする
しびれるような冬の厳しさの中に銀世界の美しさを愉しんでみたりする
きらめく葉っぱのしずくに思わず見とれたりする
不意に雨が降ってくる、梅雨の小さな雨、夏の大きな雨
前を向こうにも震えだしてしまって、下しか向けなくなる
涙なんて流してしまって、もがいても沈むばかりで、流れ着いた浜辺で上手に笑えなくなったりもする
前を向くと不意に他者が視界に入ってくるし、思わぬ罵声を浴びせられて僕のペースは乱れてしまう
必死に自分だけを見つめた
冷たいガラス窓とカーテンの隙間は寒くて凍えそうだったけれど、声を押し殺して流した涙に同情したお月様は僕の味方だった
散りばめた星の数を数えたら少しだけ空に浮けて、宇宙に還れるんじゃないかって錯覚できた
大好きな音楽を聴いて眠る午前の2時
それでもって立ち上がる午前の5時、朝焼けの空はまだ生焼けだったけれど、僕にはまだ未来があるように思えて、自転車で突き抜ける風のようになれたらと願ってペダルを漕ぐ
そうやって遠回りして見つけた、ハートの形をした石を大切にポケットにしまったら、まだ見たことのない花を探しに行く
恐れることはない、きっと大切な何かが見つかる
気付けばたくさんの言の葉が手のなかに
自分のペースで上手に整えたら、宝物になった
きみに共鳴してもらうためじゃない
それでも、一昨日に逃げたいけれど、どうしても明日に染まらないといけないときにふと思い出して、噛み締める唇の力が少し緩んで、うまく言葉が紡げるようになるための飴玉一粒にでもなってくれたら嬉しい
星凪莞さんの短歌一覧
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日常サティスフィクション 星凪莞 @nintaikanata
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