黒薔薇学園男子校

なぎさセツナ

第1話 黒薔薇学園

黒薔薇学園、それは保育園から大学院まである一貫校でありながら、外部入学も可能な男子校だ。

基本全寮制だか、幼い子達は通学だ。

中学からが寮の受け入れがある。

また、場所が車通学でないと通学しにくい山の中なので、入寮する者が殆どである。

レベルはエリート校であるが、場所と寮生活を敬遠してか外部入学者が意外と少ない。

因みに山全体が学園の敷地である為、生活に困る事は無いほど全てが揃っている事はあまり知られていない。

それほど広大な敷地を持っている事が知られてないからだ。

椿 渚は高校受験を控えていた。

しかし、渚は困っていた。

中学教師から受験妨害の嫌がらせを受けていたからだ。

クラストップ、学年上位2%の成績でありながら、"お前のような文武両道なヤツが大嫌いだ。"と僻みから成績に低評価を付けられ、公立高校に行くには、実力の7ランク下にしか行けない状態にされていたのだ。


(椿 渚)

うーん、困ったなぁ……これだと公立はちょっとなぁ……

私立なら受験成績一発勝負だから成績相応の高校に行けるが、ウチは貧乏だからなぁ……



そんな時、黒薔薇学園のパンフレットを見つけた。


(渚)

ここ、全寮制かぁ……全寮制なぁ……

しかし学費が……えっ?世帯所得によって変わる?

寮費など衣食住も含む?

これ、良いんじゃね?

ここなら行けるかも、レベルも成績相応だし。

うーん、男子校かぁ……まぁ、関係ないな。

えっ?大学院までエスカレーター!

就職は……えっ?こんなに一流企業に就職できるの?これしか無い!ここしか勝たん!!



早速親と相談した。

親は学費等が払えるならと了承した。

他の私立は高くて払えない。

とはいえ、公立に行くにはいくらなんでも……だからだ。

世帯所得の証明書が要るという事で、早速用意して願書と共に送った。


(母)

えっ?こんなに安いの?!


(父)

これなら払える!


(母)

それに将来の就職先も良いわね。

学費も安いのが助かる。


(父)

しかし、なんでこんな良い条件の高校が知られてないんだ?


(母)

全寮制、男子校だからじゃない?

高校といえば共学が定番だし。

大学院まで男子校っていうのが引っかかるんじゃないの?


(渚)

そんな事はどうでも良い。

やはり就職率と就職先だよ。

大学院まであるから受験の心配ないし。


(母)

でも、高校からは留年があるから気をつけてよ。


(父)

まぁ、この学費なら払えるからしっかり勉強して楽しめ。


(渚)

うん、そうする。



そうすると、受験番号と当日の持ち物を書いた受験表が送られてきた。


(渚)

えっ?面接だけ?

持ち物は中学3年間のテストの解答用紙?

どゆこと?


(母)

変わった学校ね、試験は無いのね?


(渚)

えーっと……受験妨害にあった生徒も大歓迎?

これボクやん。


(母)

ほんとね。



で、当日、受験会場に行く。

シャトルバスでの送迎だったが、バスガイドから説明を受ける。

この山はもう学園の敷地であること。

山奥の学校だが、一つの町のようになっているので、日常生活には全く影響が無い事。

学生寮での生活は快適である事が動画で紹介された。


(渚)

これ良いんじゃね(輝く目)



渚は期待に胸を膨らませていた。

面接は呆気なく終わった。

中学での事。

成績の事。

将来の目標。

志望動機。

趣味。

渚は正直に答え、貧乏なウチでは非常に助かる。

将来の就職が明るい事。

中学では教師から受験妨害を受けた事などを話した。

では、結果を楽しみにと言われ、退席した。

後日、合否通知が届いた。


(渚)

やった!合格した!


(母)

良かったねぇ!頑張ってね。


(渚)

うん!



入学当日、持ってくる物は無し、全て用意していると書かれていた。


(渚)

持ってくる物無し?

全て用意?


(母)

ふーん、良いんじゃない?


(渚)

趣味とかどうするんだろ?


(母)

全て用意しているって書いてあるから大丈夫なんじゃない?


(渚)

まぁ、そうか……



入学当日、最寄りの駅からシャトルバスで学園に向かう。

入試の時とは比べ物にならない豪華なリムジンバスでの送迎だった。


(渚)

マジかっ……こんなバス、乗った事が無い!



車内では、飲み物と軽食が配られた。


(渚)

こんな豪華なのにあの学費?

しかも寮付きで。

でも、合格者って意外と少ないんだ……



リムジンバスは2台だったので、合格者は多くみても20人だ。

入学式では合格した事への祝辞や、まぁ、お決まりの話があり、寮の発表があった。


(渚)

えーっと……S棟の69号室か。



渚は配られた地図を頼りに学生寮に行く。


(渚)

なんだこれ!!



そこは一流ホテルか?というぐらい贅沢な建物だった。

中に入って震える。


(渚)

こんなとこ、来た事が無い(焦)



とりあえず割り振られた部屋に行く。


(渚)

・・・は?



まるでスイートルームのような部屋だった。

中に入ると、制服、寝着、普段着、お金、日用品など、ありとあらゆる物が用意されていた。

そして、お金は敷地内に居る限り不要、全てがタダ!

敷地外に出た時に使う為との事。

しかも毎月支給され、何に使ってもよい。

貯金、仕送り、寄付など、自由に使ってよいが、仕送りは許可が要るとの事。

親の世帯所得で授業料等が決まる為、仕送りした為に支払いが増える場合があるので推奨しないと注意書きがあった。

どちらかというと、社会に出た時の蓄えにする方が良いという事だった。


(渚)

なるほどな。

仕送りはやめておこう。



すると、突然音楽が流れ出した。

表示を見ると、食事の時間との事。


(渚)

やっぱ時間は決まってるよな。



そう思って食堂に行くと、新入生歓迎会だった。

そこで説明があり、食事は注文式とビュッフェ式、あとルームサービスがあると説明があった。

唯一、ビュッフェ式は24時間対応だそうだ。


(渚)

す、凄いところに来ちゃったなぁ……


バスタイムの説明もあった、24時間対応とのこと。

それだけに、自分がしっかりしないとすぐに堕落してしまうとの事で、学校側からもう無理でないか?と判断されたら退学になるとの事。

自己管理と自己責任だそうだ。

好きな物を好きなだけ食べれるが、体調を崩しては意味がないとの説明もあった。


(渚)

なるほど……しっかりしなきゃ。



それから食事をし、部屋に戻った。

しばらくすると、ドアをノックされた。


(渚)

なんだろ?



ドアを開けると、1人立っていた。


(渚)

はい、あのう、どうしました?


(西園寺 司)

こんばんは、僕は隣りの部屋の西園寺 司です。

小学校から通ってるから、分からない事があったら、何でも聞いてね。


(渚)

ありがとうございます。


(司)

そんな堅苦しくならなくて良いよ、同学年なんだから。


(渚)

はい、よろしくお願いします。


(司)

いや、そこはよろしくで良いから。


(渚)

あはは(汗)



隣りが良い人そうで良かったと思う渚だった。

そこに……


(北条 蓮)

よっ、新入生、俺は北条 蓮だ。

中学から通ってるし、コイツとはマブダチだから、なんかあったら言ってくれ。

部屋は反対の隣りな。


(渚)

よろしくお願いします。


(蓮)

そこはよろしくで良いって。


(渚)

はい、いや、うん。



とりあえず顔合わせみたいな感じで解散した。

ちょっと色々理解しないといけない事が多い、整理する為に部屋を調べた。

色々と解説書みたいな物があって、それを読む。


(渚)

うーん、基本自由だなぁ……すべて自己責任って感じか。

自己管理もしっかりしないとヤバいな。

敷地内に一通り揃ってるのは凄い、しかも全て無料か。

これ、取り合いになったりしないのかな?

まぁ、無難に過ごすか。



渚は今後の過ごし方を考えた。

翌朝、起きてみると、授業開始は4月8日それまでは自由、敷地内の散策を推奨。

と書いたメールが届いていた。


(渚)

連絡はスマホかぁ……流石だね。



渚は散策しようと普段着に着替えていると、ドアがノックされた。


(渚)

はーい。



渚がドアを開けると、昨日の二人が立っていた。


(司)

おはよう、今日から散策行くでしょ?


(蓮)

俺達が案内してやるよ(微笑み)


(渚)

ありがとう。



渚は二人に案内される。

学園の敷地は凄い事になっていた。

"無い物は無い!"という状態だった。


(渚)

す、凄い!


(司)

でしょ?ここに無い物は無いよ(微笑み)


(渚)

これ全部タダなんですか?

取り合いになったりしないんですか?


(蓮)

そこはこの学園のポリシーだ。

"紳士であれ、規範であれ"

これが出来ない者は退学だ。

だから、揉め事は無ぇ〜。


(渚)

凄いね!


(司)

だから、受験妨害されたような嫌な思いはしなくていい。

安心して学園生活を楽しで。


(渚)

うん、そうする。


(蓮)

また助け合いがモットーだ。

試験前には勉強会をやる。

大体寮の隣り同士で数人だな。

特に仲良くなればソイツも来るから、原則っうか、まぁ一例みたいなモンだ。


(渚)

なるほど。


(司)

で、部活はどうする?


(渚)

部活かぁ……


(蓮)

縦横の繋がりも大事だぜ。

それに部費なんか無ぇ〜。

必要なのは全て支給される、気にしなくていい。


(渚)

凄いね!


(司)

知識やビジネスマナー以外にも繋がりは必要だから。

卒業生は先輩後輩関係なく助け合ってるからね。

だから一流企業が多いんだ。

政治家も居るよ。

ボクらみたいなのを守る為に頑張られてるし。


(蓮)

この敷地だって、政治力で勝ち取ったしな。


(渚)

ふぅ〜ん、凄いね……

ん?ボクらみたいなの?


(司)

えっ?いや、何でもない(汗)


(蓮)

気にすんな。

それより学園生活楽しめ(ニヤッ)


(渚)

分かった、ありがとう。



なんか意味深な発言が無かったか?

まぁ、気づいてない渚だった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

2025年12月21日 22:00
2025年12月22日 21:00
2025年12月23日 21:00

黒薔薇学園男子校 なぎさセツナ @setsuna_tereshia

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画