ノスタルジック・コボコボ

kgin

第1話 ノスタルジック・コボコボ

 変えたばかりのネイルが目立つように写真を撮った。カップ入りのソフトクリームは背景か、よくて写真をSNSにアップする口実だ。肌色とネイルの光沢が綺麗に見えるように加工して、投稿ボタンをタップする。


「ねえ、溶けちゃうよ」


 食いしん坊のミオリはソフトクリームに乗った焼き芋をつまんで頬張っている。確かに、明るい調光のモダンな店構えとソフトクリームとの取り合わせは都会的でお洒落ではあったが、「焼き芋」と言われるとどこか田舎っぽさを拭えない気がした。やっぱりマロンづくしのアフタヌーンティーに行くべきだったかな。


 ミオリに急かされるようにして、しぶしぶスプーンを手に取った。ソフトクリームの上にトッピングしてある冷やし焼き芋は、専門店というだけあって四種類のサツマイモの品種から好みのものを選ばされた。「甘さを押し付けない優しいお芋さん」というキャッチコピーに惹かれて選んだのは、ベニサツマ。スプーンを入れるとしっとりとして、案外簡単に掬いとることができた。


 口に含んで驚いた。


歯で触れただけでコボコボと崩れていくような繊維質の少なさ、舌馴染みのいい食感。そして、砂糖を使っていないとは思えないほど力強い自然の甘みが口いっぱいに広がる。冷やすと甘さが控えめになるのかと思ったがむしろ逆で、焼き芋というよりもスイートポテトを思わせるそれは、濃厚なミルク感のソフトクリームとよくあった。


でも一番驚いたのはそんなことじゃなかった。このサツマイモ、食べたことがある。優しい甘み、コボコボと崩れるような食感。ああ、そうだ。昔、実家のばあちゃんが焼いてくれてたのは、これだったんだ。共働きの両親の代わりに、親戚からもらったクズ芋をよく焼いてくれてたっけ。「よかったら食べな」と押しつけがましくなく持って来てくれるのが、大好きだった。


スマホを取り出して、久々の番号に電話した。

「ばあちゃん、次の連休に、ばあちゃんげ、かえっでねえ」


おわり

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