閑話 妹とキスをする、いっぱい

 キスってなんで、こんなに気持ちがいいんだろう。



 濡れた唇の感触と、少し甘くしょっぱい唾液の味を、舌で感じながら、そんなことをふと想う。



 だって、よく考えると少し不思議だ。



 大事なところとか、胸とかが触って気持ちいいのは、なんとなくわかる。



 子孫を残すために、形作られたものだもの。望んで子供を作るように、初めからそう出来てるんだ。それはとても自然なこと。



 でも、唇は、別にそういう目的のために、作られたものじゃない。



 私達が生き物として生きていく過程で、唇を交わす行為はどう考えても不要なものだ。



 でも、そんな不要で余分なはずのものが、どうしてこんなに心地いいのかな。



 電気もついてない、暗い部屋の中、ストーブの前で君とただ唇交わす。



 ぼんやりとした灯りを頼り、濡れたその場所を探して、啄んで、そっと重ねる。



 凍えた身体を温め合うように抱き合って、熱を分け合うようにただキスを繰り返す。



 ぴちゃっという音がする。



 胸の奥で、熱い何かが漏れ出していくような、感覚がする。



 伸ばした舌が、あなたの熱い唇の奥へと呑まれてく。



 頭の奥で、紅い何かが弾けて背骨の奥へと、私の身体を溶かしてく。



 でも、足りない。



 温かくて、幸せで、気持ちよくて、堪らないけど。



 でも、足りない。



 くろえと二人、なりふりも構わぬまま、お互いの孔を埋め合うように、契りを交わし続ける。



 そうやって、あなたと繋がってる間だけは、私の心が独りぼっちにならないで済む気がしたから。



 抱きしめる腕が、私の意思とは関係なく、小刻みに震えだす。



 快感が脳から背骨を通って、全身を犯すように、甘い痙攣を連れてくる。



 ぎゅっとくろえに抱き寄せられる。背中と腰をぎゅっと、縋るように掴まれる。



 少し痛いその手の感触さえ、今はただ気持ちがいい。



 ああ、まずいなあ。



 思わず、そう想ってしまう。



 だって、私はあなたを、受容れてしまったのだ。



 この想いを、この関係を、受容れてしまったのだ。



 もう抵抗する術がない。もう言い訳をする術がない。



 この快楽に堕ちていく以外、出来ることがない。



 何度目かもわからない、口づけと、何度目かもわからない、抱擁に。



 奔流のような快感に、私はただ震えることしか出来なくて。



 そして縋るように君の背中に食い込ませた指の先で。



 くろえの身体も、微かに甘く震えてた。



 ストーブの熱と、温め合った体温が、段々と寒さを忘れさせていく。



 ようやく離した唇の間には、微かに光る雫が垂れていて。



 漏れ出る吐息は、二人とも荒れたまま、焼けるように熱かった。



 そうやって、呼吸を少し整えた後。



 私はそっと眼を閉じた。



 同時にまた、唇が奪われる。



 貪るように、食むように、噛み付くように。



 そしてまた、どうしようもない程の気持ちよさに、私の意識は溶けていく。



 もう何も考えられない。



 でも、きっと今は、今だけは。



 それでいいのかもしれないと、そう想う。



 君と吐息を重ねたまま、君と唇を交わしたまま。



 ただこの快楽に、今は身を任せたかったから。



 段々と夜は更けていく。



 熱に浮かされた私たちを、抱えながら。



 今はただ、君の腕の中が。



 どうしてか、こんなにも心地が良かった。

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