プリンセス・シークレット 『秘密の金髪お嬢様との学校生活』
冰藍雷夏『旧名は雷電』
第1話 幼馴染みで金髪お嬢様の借金を立て替えた件
俺は今、預金通帳とにらめっこしている。
「マリアの借金の肩代わりで貯金残高が殆どなくなったな……だが後悔はない」
「ごめんなさいですわ。
暗い裏路地で、這いつくばりながら、俺に謝罪する女の子は、全てを失った、金髪お嬢様幼馴染みの〖
腰まである長い絹糸の様な髪に。
翡翠の用に緑色の綺麗な瞳から涙を流して、申し訳なさそうに謝ってくれている。
俺、
つい先日まで日本を代表する大手企業。九条カンパニーのご令嬢だった娘だ。
なにを血迷ったのか、マリアは両親に反発し家出。悪い詐欺師に騙されて借金まみれになり、さっきまでは借金取りに風俗落ちさせられ一歩手前の崖っぷち令嬢だった。
「ギャハハハ! 俺達に売られなくて良かったな。真莉愛お嬢様よう。借金の肩代わりをしてくれた幼馴染み君に感謝しな。あばよう。マリアちゃんよう~!」
「見栄っ張りの性格のせいで、親にも相談したくないとはな。金持ちの彼氏君で良かったな、嬢ちゃん……強く生きろよ。応援してるからよう」
借金取り達は、大金が入ったショーケースを持って去って行った。
「………とりあえず。俺の家に行こうか。マリア」
「シクシン……ハイですわ。綾人くん……立ち上がれないので、私の手を掴んで起こして下さいまし~」
「はいよ。プリンセス様」
しかし、せっかく自由を得られたのに、マリアはいつまでも泣いてんなだ。自由の身になったんだから、もっと喜べば良いのにな。
路地裏を出で、少し歩けば俺と姉さんが住む高層マンションへと着いた。
「す、凄い大きいお家ですわね! 流石、綾人くん。凄くお金ちになったんですのね!」
マリアが目をキラキラさせて俺を見詰めているが、絶対なにかを勘違いしてるよな。
「……俺んち、このマンション丸ごとじゃないからな。マリア」
「……へ? そうなんですの?」
「当たり前だろう。俺と姉貴の家はこのマンションの1部屋に住んでるだけだ。勘違いしないでくれ」
「……このマンションの部屋?……1棟の間違えではないですの?」
流石、九条財閥のご令嬢。庶民感覚がある俺とはスケールが違う。
マンション丸々1棟に住むとか、どんな金持ちだよ。
「……ここに居ても仕方ないから。早くエレベーターに乗ろうぜ、マリア」
「綾人くん。ここには使用人さんが住んでいますの?」
「使用人?……いや、管理人しか居ないけど。何で?」
「いえ、先程、メイドさんがマンションの中に入って行きましたので、そう思っただけですわ」
……マリアは相当疲れているんだな。早く部屋に連れていって、休ませてやらないと。
◇
マリアと一緒にエレベーターに乗り、姉さんと暮らすと一緒に暮らしている家へと向かった。
幼い頃、俺と姉さんは両親に捨てられた。その後、その時、高校生だった姉さんは高校を止め、美容関係の会社に勤めながら、俺を育ててくれた。
そして、俺が中学に上がる頃には、会社から独立し。化粧品会社を
エレベーターで移動中、僕の隠していた過去話をマリアに教えてあげた。
「それで今、住んでいるのがこの最上階にある部屋って事だ」
「……私、綾人君がそんな状態になっているなんて知りませんでしたわ」
「誰にも言ってなかったからな……着いた。姉さん、今家に居るのか?」
「
「まぁ、怒らせなければ優しい人だから大丈夫だ……多分」
俺の隣でスゥーハァーと、息を吸うマリアにそう言いながら、玄関のドアロックを解除して、玄関扉を開けると。
「はぁああ?! 新商品が国内外で爆売れ?! 補充しないとクレームになるってどういう事よおぉぉ!」
「「ん?!」」
扉を開けた途端、姉さんの怒鳴り声が聴こえて来たせいで、俺とマリアの口がミッフィーみたいになってしまった。
「あ~! 分かった分かった! 会社に戻るから準備するわよ。全くー! なんで新作を度にヒットするわけ? 意味分かんない!……あれ? 綾人と……マリアちゃん? 何で?マリアちゃんが家に来てんの?」
「た、ただいま、姉さん」
「お、お邪魔致しましたわ。
スマホ片手に姉さんが玄関へとやって来て、俺達を発見。そのまま数秒硬直していた。
「……ん~? 何? 君達やっと付き合う様になったの? 今日はうちでお家デートか?」
「違う!」「ち、違いますわ!」
「アハハ! 息ピッタリ~! 受ける……あ!
『?!――――!!』
「あ~! うるさ、切ろう!」
ピッ!ツゥーツゥーツゥー……
姉さんはスマホの電話を切ると俺達に向き直り。
「そんで? 何があったん? 話聞こうか?」
優しく微笑み、俺達を部屋の中へと迎え入れてくれた。
◇
「ほうほう……詐欺師に騙されて、多額の借金を背負わされて……怪しいお店に売り飛ばされそうになった?……プッ……プハァ!! 受ける!! 流石、マリアちゃん。超ド天然なのは変わってないね~! はぁ、面白い……」
「な! ひ、酷いですわ! 夕凪お姉さま」
「挙げ句の果てに、綾人に借金を肩代わりされて、綾人のモノになるとか、恥!
「……笑いすぎですわ。夕凪お姉さま」
姉さん大爆笑である。流石、究極の陽キャだ。人の不幸をここまで爆笑できるとは、上場企業まで会社を押し上げた人はやはり普通じゃないんだろうな。
「アハハ……ごめんごめん。でも、マリアちゃんも騙されたのか、最近多いね」
「マリアちゃんも? それはどういう事だよ。姉さん」
「ん~? 綾人知らんの? 最近、若いお金持ちのお嬢様を騙して、借金漬けにするヤバい詐欺師が居るらしいって噂よ」
「ヤバい詐欺師?……そんな話聞いたことないけど」
「それが入るらしいのよ。このマンションにも、その詐欺師に騙された娘が住んでるしさ。メイドさんとして、住み込みで働いてんだって、可哀想だよね~!」
メイドさん?……あぁ、さっきマリアが見たとかいう人だろうか?
「あの……夕凪お姉さま。それでですね。私、綾人君の所有物になったのですが……その……」
「そうだね。綾人が昔から、頑張って将来の為にやりくりして作った貯金を使わせたもんね~! その罪は万死に値すると思うよ。マリアちゃん」
姉さんは眼光鋭く、マリアを見詰めた。
「ひい! は、ハイですわ! 」
そして、その眼光を受けたマリアは、生まれたての小鹿の様にプルプルと震えていた。
「だから、君はその豊満な体を使ってでも、綾人に尽くしてあげないといけないんじゃない?
ん~?」
姉さんが、マリアの胸を指で押し当てながらそう告げた。
「は、はひ! しっかりとご奉仕しますわ! よろしくお願いします。綾人くん」
「いや、大切な幼馴染みにご奉仕されても困るわ。別に俺が好きでやったんだから気にしなくていいって」
「何を言ってんだ! この馬鹿弟野郎がぁ!!」
「ごがぁ?!」
「綾人くん?!」
姉さんは俺の左頬をおもいっきり叩くと。俺の胸ぐらを掴んで叫び始めた。
「馬鹿野郎! お前、こんなドスケベボディーを好き勝手できるんだぞ! 大金も失ったんだから好き勝手弄ればええんじゃい!」
「ド、ドスケベボディー?! 私がですの?」
この陽キャ上場企業社長は何を言ってんだ? 頭が可笑しいのか?……いや、姉さんは昔から可笑しいかったか。
「何がええんじゃい!だ。別に俺はマリアに変な事をする為に借金を肩代わりしたんじゃないって、マリアが風俗に売られるとか、目の前で借金取りに聞かされて、借金を肩代わりしたんだよ!」
「……アンタ馬鹿? それで将来、大学やら留学やらに使う金を失ってどうすんのよ」
「何?」
姉さんが冷たい目で俺の目を見つめる。
「マリアちゃんを金で買って、自分の人生はおじゃんにしてんじゃんないの。私、綾人に言ったわよね。お金はきちんと考えながら使いなさいって、じゃないと破滅する事になるってさぁ」
「……覚えてる。だけどマリアの人生が破滅するよりは良い! マリアは俺の大切な幼馴染みなんだぞ。風俗落ちなんて、絶対にさせられるかよ!」
「あ、綾人くん……私の為にそんな……ごめんなさいですわ」
俺の言葉になぜか感動したのか、マリアがウルウル泣いている。
「……口ではなんぼでも言えんのよ。馬鹿野郎、アンタは大金を失って、マリアちゃんを得た……でもその後はどうすんの? 家で養う? 馬鹿いんじゃないわ。世間はそんなに甘くないわよ。一緒に住むだけでお金なんてかかって来る、アンタはマリアちゃんの衣食住どうやってこれから捻出してくわけ?」
「それは……俺が必死こいてマリアを養うよ。マリアは俺の大事な幼馴染みだし、大学に行く為のお金も自分でなんとか用意するさ!」
そんな苦し紛れの宣言を堂々と言ってしまった。
しかし、流石は俺を育てながら、自分で起こした会社を上場企業まで育てた人だ。言葉の重みが違う。
だがしかし、あの時の判断は……マリアの借金を肩代わりして助けた時の判断は絶対に正しかった。だってマリアは俺にとって大切な……
「なんてね! アンタの覚悟を試すのはこれで終わり!」
「は?……おわぁ?!」
姉さんは俺の胸ぐらを放すと、懐から
「家には置いてあげるから、その宣言通り。マリアちゃんとはアンタが暮らしていくお金と将来のお金は自分達で用意しな。お姉ちゃんとの約束だぞ」
「は、はい……ありがとう。姉さん」
「……あ、ありがとうございますわ。夕凪お姉さま」
「うむうむ~! 自立しろ自立しろ~! 自立して社会出れば楽しいからね。性格の悪い奴等を自分の能力で叩き潰せるからね。うんうん」
なんつう。強者の発言だよ。いや、実際に姉さんは強者か……最近は、自分で立ち上げた化粧品会社の安定した売り上げを軸に、新事業をどんどん立ち上げて、倒産しかけた会社を買収したとか言ってたよな……名前は確か藤乃財閥とかだったか?
まあ、俺には、そんな恩恵は1つもなく。俺が高校を卒業したら、ここからさっさと出ていくように言われてるしな。
お金だって衣食住以外で貰っていたお小遣いも、高校生に上がってから打ち切りになったんだよな。
あの時は、稼げる歳になったら、さっさと汗水垂らして働いて来いとか言われたな……
「まあ、私は忙しいから、
「ぶほっ!……げほげほ……姉さん。何言って……」
「チチクリ?……綾人くん。チチクリ合うとは何の事ですの?」
……そんな純粋な目で見てくるんじゃない。マリア!……そうか、マリアは本物のお嬢様だったから、こう言った知識には疎いのか。
「ん~? 気になるの? マリアちゃん」
「は、はいですわ」
「チチクリ合うっていうのはね。男と女が……」
「マリアに何を教えようとしてんだ。アホ姉さん!!」
「ん? 義理の妹になりそうなマリアちゃんに、性への知識を教えようとしているだけだけど。何?」
「……い、いいから会社行くんだろう? 急がないと、
「アハハ! 綾人、必死過ぎ~! どんだけマリアちゃんにゾッコンバッコンだし。受ける~! それじゃあ、マリアちゃん。口では厳しく言ったけど、綾人との秘密で禁断の生活を楽しみなよ~! それじゃあね~! あ~忙しい忙しい~!」
ガチャッ!
「………なんであんなにいつも元気なんだよ。しかも忙しいとか言って、いつも海外に遊び回ってるし……超人過ぎだろう家の姉さん」
「あ、綾人くん」
マリアが俺の両手を掴んで、もじもじしている。
「ん? マリア、どうした?」
「は、はい……これから私は綾人の所有物として一生懸命ご奉仕しますわ……ですので、至らない事がありましたら。直ぐに、駄目と怒って下さいませ」
「いやいや、俺がマリアに怒るわけ……」
プルプルプルプル!
……なんだよ、もうマリアに言いかけている途中にさ。
「……姉さん? なんだ。まだなんかあるのか?」
ピッ!
「あ! もしもし綾人! 元気にしてた?」
「元気もなにも、さっき別れたばっかりだろう。姉さん……それで? まだ何か用事があるの?」
「そうそう。用事ね用事~! さっきの一緒に住む為の条件だけどさ~! 普通にマリアちゃんを住まわせるだけじゃ、つまらないからゲームにするわ」
「ゲーム? 何の?」
「マリアちゃんが借金して、綾人が借金を肩代わりしたって、知られちゃいけないってゲーム……ゲーム名長いな……ん~?……お! そうだ良いゲーム名を思いついたよ。綾人~!」
「……早く言ってくれ」
この人は本当に人を試すというか、試練を与えたがるというか。
「名付けて、《プリンセス・シークレット》・元お嬢様の秘密を守り抜けゲーム」
「……それも長いゲーム名なのでは? それで? どんなゲームなんだよ。姉さん」
「アンタ達の秘密の関係を私以外の他の人にバレたら、アウトって……そしたら、2人まとめて家から出てってもらう事になるから宜しくね。バイバイ~!」
ピッ!
「は? 姉さん! 何を言ってるんだよ! 姉さん! もしもし! 姉さん!……くそ切れらた」
ツゥーツゥーツゥー!!
電話は姉さんに一方的に切られていた。
「あ、綾人くん。どうしたんですの? お顔が真っ青ですわ!」
「……本当にあの人は試練を与えたがるよな。なんだよ。俺とマリアの秘密の関係を守り抜けって……全く」
こうして、マリアは俺と姉さんが住む家に、暮らすことになったのだが、それと同時に、姉さんからの試練も始まってしまった。
俺とマリアが同じ家に住む事を他人に知られてはいけない、《プリンセス・シークレット》とかいう理不尽極まりない、姉さん主宰の謎のゲームが……
◇
第1話を最後まで読んで頂きありがとうございます。カクヨムコン短編でした!
これは面白い!っと思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビュー、作者フォロー等々をして頂けると嬉しいです。
◇
プリンセス・シークレット 『秘密の金髪お嬢様との学校生活』 冰藍雷夏『旧名は雷電』 @rairaidengei
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