桃太郎、鬼姫に一目惚れ、そして修羅場

ざつ@🏆=カクヨムコン参加作品!!

桃太郎、鬼姫に一目惚れ、そして修羅場

テーマソング:『桃色修羅場カーニバル』

https://www.topmediai.com/app/ai-music/shared/9958536


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1.出発、そして道中の浮気疑惑

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「いざ、鬼ヶ島へ!」


桃太郎は、旅立ちの前に幼馴染のかぐや姫から贈られた「無病息災のお守り」を腰に結び、勇ましく里を出た。お供の犬、猿、雉を従え、目指すは鬼ヶ島。しかし、その道中、桃太郎は本来の目的を忘れがちだった。


犬が呟く。


「殿、この里で寄り道しすぎじゃないっすか? 『舌切りすずめの宿』で、すずめのお嬢さんと長話してただろ!」


「雉も鳴かずば撃たれまいだ! すずめ殿は道案内をしてくれただけだ!」


猿が続ける。


「ふん、その前の竜宮城と繋がりのある村では、乙姫様からもらった豪華な玉手箱を、恋愛成就のおまじないだとかなんとか言って、肌身離さず持っていたのは誰だ?」


「あれはただの友情の証だ!」


桃太郎は顔を赤くして反論するが、どこか歯切れが悪い。


雉がとどめを刺す。


「コケッ! さらにその前、『花咲かじいさん』の村で、出会った可憐で超絶美少女の孫娘に『灰をまいて私の心にも花を咲かせて』と口説いていたのを見たであります!」


犬がさらに追い打ちをかける。


「それだけじゃないっす! 『金太郎の山』を通った時、山で出会った、健康的な小麦色の肌を持つ快活な美少女と、力比べと称して終始デレデレとイチャイチャしてただろう!」


猿が深くため息をつく。


「ああ、あの時、桃太郎殿が負けそうになって、慌ててきびだんごを差し出していたのは、敗北の罰ゲームを逃れるためか…」


「うるさい! それは僕の持ち前の優しさだ!」


桃太郎の鬼退治の旅は、実質的に「各地の姫・美女との色恋の旅」になりかけていた。


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2.鬼ヶ島、運命の一目惚れ

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そうしてようやく辿り着いた鬼ヶ島。


激しい戦いの末、桃太郎は鬼の親玉の広間に踏み込んだ。愛刀を構えた彼の前に現れたのは、恐ろしい鬼ではなく、月光のように美しい鬼の姫、朱魅(しゅみ)だった。


桃太郎は、刀を持つ手が微かに震えるのを感じた。


(なんて…なんて、美しいんだ…!)


戦いの意図は消え失せ、彼の心臓はプロポーズの鐘を鳴らし始めた。


「貴様が、桃太郎か?」


朱魅の冷たい声が響く。


桃太郎は、刀を地面に突き立て、熱い眼差しで訴えた。


「いや! 待ってくれ! 僕は…貴女に、一目惚れしてしまった! 鬼退治どころではない。私と…結婚してほしい!」


広間に響く「えええええええっ!?」というお供と鬼たちの大合唱。


朱魅は、微笑んだ。


「面白い人間だ。いいだろう、桃太郎。私の名は朱魅。この鬼ヶ島の長だ。ただし、私と結婚するなら、里に帰って両親を説得し、正式な結納の品を持ってくること。あと、私を『お宝』呼ばわりは減点だ。恋人と呼べ」


「朱魅!ああ、朱魅!僕は朱魅の恋人になれるなら、雑用でも何でもやります!」


桃太郎は、完全に愛の奴隷と化していた。


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3.月からの刺客、怒りの鉄拳と情報戦

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この甘いラブコメ展開に、突如、激しい光が差し込んだ。未来的な竹細工の乗り物から降り立ったのは、怒りに顔を真っ赤にしたかぐや姫!


「桃太郎! その手を離しなさい!」


かぐや姫は、朱魅と手を握り合う桃太郎を一瞥し、すさまじい剣幕で扇を広げた。


「桃太郎! この裏切り者! 月に帰る前にあなたに渡した『不老不死の薬』は、私からの最後のラブレターだったというのに! まさか、あろうことか、私と同じ『竹や桃から生まれた運命共同体』でありながら、私を差し置いて鬼なんぞと!」


「かぐや姫!? どうして知って…」


桃太郎が顔面蒼白になる。


かぐや姫は、怒りで震える声で、これまでの桃太郎の浮気疑惑を一気にぶちまけた。


「知っているわよ! あなたが舌切りすずめの宿でメロメロになっていたことも! 乙姫様から玉手箱をもらっていたことも! そして、あの乙姫様の玉手箱の中身…つまり、『桃太郎と乙姫のツーショット写真』の入った玉手箱を、乙姫自身からリークされたこともね!」


「え…乙姫が? なんで…?」


桃太郎が言葉を失う。


猿が首を傾げる。


「乙姫様も、桃太郎殿に本気だったってことか?」


「幼馴染で、私とあなたは、桃と竹という似た者同士。この世に遣わされた似た者カップルだったはずなのに!裏切り者!裏切り者ー!」


かぐや姫の叫びが広間に響き渡る。


4.鬼姫VSかぐや姫、究極の選択


朱魅は、桃太郎の肩を抱き寄せながら、余裕の表情でかぐや姫を見据えた。


「ほほう。浮気者だったとはな、桃太郎。だが、それはそれ。私の魅力に逆らえなかったということだろう?」


桃太郎は慌てて口を挟む。


「お、お、鬼嫁になるの!? そんな、物騒な…!」


かぐや姫は、桃太郎を一瞥し、冷たく言い放った。


「おだまり!」


桃太郎はぺしゃりと黙り込んだ。


「何を言っているの!鬼姫!」


かぐや姫は激昂した。


「桃太郎は、優しすぎて女性を拒めない優柔不断なだけよ!私とあなた、どちらが真に彼を愛し、彼の鬼嫁となるにふさわしいか、ここで決着をつけましょう!」


「上等だ。鬼ヶ島の長として、負けるわけにはいかないな!」


かぐや姫は、扇を朱魅に向け、宣戦布告する。


「勝負よ、朱魅! 第一ラウンドは…どちらが桃太郎の服を完璧に洗濯できるか対決!」


「洗濯だと!? 上等だ!鬼の洗濯術は、血の汚れも落とすぞ!」


桃太郎は、二人の美女の間に挟まれ、顔は引きつっているものの、どこか満更でもない表情を浮かべている。犬、猿、雉は、もはや戦意喪失し、座り込んでお供同士で話し合っていた。


「殿は…なんでこんなにもモテるんだ…」


「たぶん、桃のオーラのせいだろ…」


「コケッ! でも、洗濯対決じゃ、桃太郎様の服がボロボロになるであります!」




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5.海からの刺客、乙姫乱入!〜そして衝撃の真実〜

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その時、広間の壁が、突如として水の泡と共に吹き飛んだ!


「待ちなさい!その洗濯対決、無効よ!」


水飛沫の中から現れたのは、絢爛豪華な着物を纏った乙姫様!竜宮城の使者である亀を従え、怒りに満ちた表情で立ちはだかる。


「乙姫!? ど、どうしてここに!」


桃太郎が、もはや驚きの声を上げる体力も尽きかけている。


乙姫は、かぐや姫と朱魅を睨みつけた。


「かぐや姫! あなたが私から桃太郎の情報を聞き出したのも、結局は横取りするためでしょ! 朱魅! あなたは敵国の鬼! 桃太郎の『鬼嫁』になるのは、竜宮城の私よ!」


「「な、なんですってぇ!?」」


かぐや姫が扇を朱魅から乙姫に向け直す。


「ふざけるな! 浮気者を巡って女同士が争うのは、鬼ヶ島の流儀ではない!」


朱魅が叫ぶ。


乙姫は、桃太郎に真の目的を問い詰める。


「桃太郎! あなたに持たせたあの玉手箱は、私のプロポーズの返事だったのよ! あなたは、私ときちんと結婚する気はあったの!?」


桃太郎は、三人の美女からの集中砲火を受け、ついにその場で膝から崩れ落ちた。


「ごめんなさい! 僕が優柔不断で、どの姫のことも…斬れなかったんです!」


「何を言っているの! 斬るのは鬼よ!」


三人の姫が一斉に叫ぶ。


その時、乙姫がふと桃太郎の腰のお守りを見て、目を見開いた。


「あっ…かぐや姫! あなたが桃太郎に渡したそのお守り、位置情報と盗聴の機能がついてるでしょ!? あなた、ずっと桃太郎を監視していたのね!」


「なんですって、乙姫! あなたのその玉手箱だって、開けると桃太郎の過去のナンパ履歴が再生される、情報リーク装置じゃないの!」


かぐや姫も負けじと反論する。


「な、なんだってー!? お守りがGPS!? 玉手箱がSNS!?」


桃太郎は衝撃の事実に、完全に魂が抜けた。


「コケッ! やっぱり玉手箱は盗撮機能付きだったであります!」


雉が叫ぶ。


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6.終局:討伐されたのは桃太郎

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朱魅は、この状況を静かに見つめ、フッと冷たい笑みを浮かべた。


「そうか。お守りも玉手箱も、全て愛ゆえの監視ツールだったわけだ。面白い」


朱魅は冷たく言い放った。


「いいか、お前たち。この男を放っておけば、また各地の娘たちをたぶらかし、最終的に人類と鬼の種の存亡に関わる重大なトラブルを引き起こす。そう、これはもはや恋心の問題ではない。安全保障の問題だ」


かぐや姫が深く頷いた。


「同感よ。桃太郎の優柔不断とモテオーラは、世界を乱すわ。私たちが妻として監視し、その力を制御しなければならない。桃から生まれた運命共同体の義務として、一生を尽くしてもらうわ」


乙姫は冷徹に結論づけた。


「よって、私たちは共同で桃太郎を監視し、管理することで合意するわ。これが、世界平和への最短ルートよ」


三人の姫は、桃太郎に愛刀を奪い、代わりに巨大な洗濯物とマグマシチューの入った鍋を渡し、同時に命じた。


「さあ、桃太郎。まずは私たちの服を洗うわよ!」


「そして、今日の夕食のマグマシチューの味見も!」


お供たちは顔を見合わせる。犬がボソリと。


「結局、鬼を退治するどころか…殿が討伐されたでありますな」


猿が深くため息をついた。


「待てよ。監視して管理するってことは…」


雉が天を仰いで叫んだ。


「コケッ! 結局、三人の姫と結婚するということではないでありますかー!?」


こうして、鬼ヶ島での戦いは、鬼の勝利でも、人間の勝利でもなく、桃太郎という一人の男が、愛という名の修羅場に敗北し、『討伐』されるという、本末転倒な結末を迎えたのであった。



(おしまい)

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