5日目

調査5日目:2025年10月24日


掲示板スレッド:秩父山間部連続神隠し事案を追う(Part 5)


タイトル: YouTuberも消息不明に。最後の動画ログ解析結果を公開 投稿者:Kishimoto_Research 投稿日時: 2025年10月24日 12:00


カテゴリー: 奇譚・神隠し事案(秩父山間部)


 本日、昨日のコメント欄で活動が確認された「神隠しウォッチャー」氏(YouTuber)が、消息を絶ったことが確認されました。彼の失踪は、現地における結界が、我々が想定するよりも不特定なターゲットにも及んでいることを示唆しています。


 警察も相次ぐ失踪事件に捜索を拡大していますが、我々は彼の残した最後の動画から、結界内部の状況に関する貴重な手がかりを得ました。解析結果と、彼の失踪に関する報道資料を以下に公開します。


1.YouTuberの動画についての解析結果

(YouTuberの行動ログ)


 解析に先立ち、彼の動画から判明した行動ログの概要を記します。彼は「ミ◯◯◯様」の正体が「狼信仰」にあると確信し、以下の行動をとっていました。


1.地元老人へのインタビュー: 「ミシャグジ」は「山を荒らす者への狼の祟り」として恐れられてきたという証言を収録。


2.道中の撮影: 現場(峠路)に向かう道中、「狼信仰」の小さな祠や、古びた「ミシャグジ信仰」の石碑を撮影。彼はミシャグジと狼信仰を同一視し、結界の原因は「狼の祟り」にあると結論づけていました。


3.祠への突撃: 最後に、狼信仰の祠に単独で突撃し、そこで消息を絶ちました。


(最後の動画ログ解析結果)


 祠の突撃シーンから神隠し発生までの、音声・映像の解析結果です。動画の一部から不鮮明ながら不自然な映像、かつ音声データのノイズを検出しています。


音声ノイズ: 「狼の遠吠え」のような、しかし不自然に高周波な人工加工音が、断絶直前に記録されていました。


不自然な映像: 祠の背後の木々の間を、「古い装束の光」が一瞬横切る、極めて不鮮明な映像が捉えられていました。


 この不鮮明な「古い装束の光」は、地元に伝わる「落ち武者伝承」(後述)を彷彿とさせます。橘の調査記録(八〇〇年前の「平家の姫君」と加え、怨霊が複数の姿を持つ可能性も否定できません。


【重要】注意喚起!!!


 我々の協力者である「神隠しウォッチャー」氏の失踪を受け、当リサーチより改めて注意喚起を行います。


 「ミ◯◯◯ジ様」を巡る一連の現象は、その地点へ近づくこと自体が危険であることを示しています。


 全ての協力者、及びスレッドの閲覧者に強く警告します。


1.現地への立ち入り、及び祠や石碑への接触は、いかなる理由があろうとも厳禁としてください。


2.この事案に関する情報の発信、議論は、このスレッド内でのみ行ってください。


3.個人の解釈や憶測に基づく、独自での現地調査や検証は、直ちに命の危機に繋がります。


 我々は、徹底した情報解析によって真相に迫る方針を継続します。



 ◇



 資料:深山に伝わる異聞


「白装束」の怨念今も〜落ち武者伝承

 古くからこの御作の里周辺の山中には、源平争乱に敗れた平家の落武者たちが潜んでいると語り継がれてきた。里人が「白装束」と呼ぶ彼らは、追討を逃れるためではなく、「世の全てを呪い続ける」ために、この地を選び永遠に留まることを願ったという。彼らは山の神を祀って強大な呪詛をかけ、その怨念が地脈に刻み込まれ結界を作り出したとされる。



 ◇



コメント欄 (計 6件)


No. 38. ユーザー名: 御左口研究家 投稿日時: 2025年10月24日 12:30

コメント本文: 神隠しウォッチャー氏の失踪は遺憾だが、解析結果は重要なものがある。「古い装束の光」が落武者であれば、橘氏の調査記録にある源氏の姫君と、平家の亡霊が関わる壮大な怨念の結界ということになる。


No. 39. ユーザー名: 境界の番人 投稿日時: 2025年10月24日 12:40

コメント本文: 怨念だろうが愛の悲劇だろうが、現象は境界のズレだ。YouTuberは自ら境界の最も薄い場所に飛び込んだ。

GPSの地点、「座標」が重要だ。怨霊などという情緒的な解釈に騙されるな。


No. 40. ユーザー名: オカルト大好 投稿日時: 2025年10月24日 12:50

コメント本文: 落武者キター!やっぱりミシャグジ様じゃなくて、源平の怨霊だよ! 姫君と落武者の悲劇とか、最高に燃える展開だろ! 岸本さん、落武者の資料早く公開して!


No. 41. ユーザー名: 秩父在住 投稿日時: 2025年10月24日 13:00

コメント本文: 映像の「古い装束」は、地元の伝承にもある「白い着物の人」じゃないのか? 落武者じゃなくて、心中した姫君の魂が見えたんじゃないか。


No. 42. ユーザー名: 神話研究家 投稿日時: 2025年10月24日 13:20

コメント本文: 人工的な遠吠えノイズに注目すべきだ。これは何者かが、意図的にミスリードを仕掛けている証拠ではないか? ミシャグジ様を狼信仰に偽装して。


No. 43. ユーザー名: Kishimoto_Research 投稿日時: 2025年10月24日 13:30

コメント本文: >>39 境界の番人氏の仰る通り、結界の入口を示す座標の調査も進めます。しかし、結界が愛の悲劇で生まれた可能性も併せて検討します。現在、落武者怨霊説を補強しうる古い資料の断片を入手しました。明日、その概要を公開し、議論を深めます。



 ◇



資料:失踪に関する報道(2025年10月24日付 地域新聞抜粋)

タイトル:秩父山中で新たに男性が行方不明に 「神隠し」事案関連か


【秩父】秩父市山間部で、動画投稿サイトの配信者である男性(30代)が23日未明から連絡が取れなくなっていることが分かった。警察は、先に発生した男女二名の神隠し事案との関連を視野に入れ、捜索を続けている。男性は、自身の動画で地元の「狼信仰」の祠を訪れる様子を公開しており、捜索は難航が予想される。近隣住民は、この一帯で発生する「道隠し」の噂に、近年ないほどの不安を募らせている。



 ◇



資料: 神隠しウォッチャーの動画再生


(ログ時間: 2025年10月22日 18:30:00 - インタビュー)


 カメラは薄暗い民家の座敷を捉えている。画面隅には、口元を隠した年老いた男性。彼はゆっくりと、よれた声で語る。


地元老人: 「ああ、ミシャグジ様なんてね、昔からこの辺じゃ山の神様ですよ。でもね、よそから来た若い衆が祠をいじるようになった頃から、祟りが始まった。あれは狼だよ。山を荒らす者には、唸り声をあげて、道を隠すんだ……。祠なんか、いじっちゃいけねぇ」


神隠しウォッチャー: (前のめりになって)「唸り声! 狼の祟りですか! それがミシャグジの正体だと!」


地元老人: 「そうさね。白い装束の姫様とか、そんな優しい話じゃないんだよ、ここは……」


(ログ時間: 2025年10月23日 09:25:00 - 山道)


神隠しウォッチャー: (興奮した声)「……はい、昨日お話しを伺った御作の里の、一番奥にある峠道に来ています! 岸本リサーチは勾玉だの愛だやってますけど、爺さんの話を聞いたか? ミシャグジは狼の祟りだ! 荒々しい神の怒りだよ!」


 カメラは彼の顔を捉えている。疲労と興奮で目がギラついている。


(ログ時間: 09:26:05 峠道、三叉路)


神隠しウォッチャー: 「見てください、この道! 右手に狼信仰の祠。左には古いミシャグジの石碑! 明らかに狼信仰が強い! そして、ここが昨日、橘と秩父在住氏が消えた三叉路だ……道がねじれてるみたいだろ?」


 カメラは、昼間だというのに暗い杉林に挟まれた、狭く、わずかに上り坂の苔むした山道を映す。湿った空気が漂っているのが映像からも伝わってくる。


(ログ時間: 09:27:10 祠の前)


神隠しウォッチャー: (決意を固めたように)「……突撃するのは、この祠だ。狼神の結界の中心、本丸だ! 俺が狼の祟りを払ってやるよ! 皆、見ててくれ! これが真実の結末だ!」


 彼はスマホを片手に持ち直し、荒い息を吐きながら、祠の奥、最も暗い藪へと一歩踏み出した。


(ログ時間: 09:28:15)


 急に映像が激しく乱れ、カメラが地面に叩きつけられたように斜めに傾く。画面が赤と緑にフラッシュし、ノイズの波が走った。


神隠しウォッチャー: 「うわっ、なんだこれ! えっ、GPSが…!?」


 彼の声は焦燥に満ちている。画面上のGPSアイコンが赤く点滅し、一瞬で消滅。


 その直後、彼の周囲を渦巻くように、「遠吠え」が響き渡った。


神隠しウォッチャー: (驚愕と困惑の声)「――まさか! この音……! 俺が仕込んだオオカミの声のSE(効果音)じゃない!? これも……誰かが……?」


 祠の裏手の暗がり。彼の叫びの直後、画面右上の、木々の隙間を、月光のように白く、曖昧な「光の線」が、勢いよく水平に横切った。


 それは、日本の古い、長く引きずる装束の袖や裾のような形に見える。その一瞬の光に反応するように、耳を劈く甲高い遠吠えが再び響き渡る。それは、獣の咆哮というより、電子的に歪められ、重ねられたノイズに近い、不気味な声だった。


(ログ時間: 09:28:19)


神隠しウォッチャー: 「あ、あああ……違う……これは……っ!」


 彼の最後の言葉は、何を否定したのか判然としないまま、映像と音声は同時にブラックアウトし、完全に無音となった。

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