調和と拡散
岸亜里沙
調和と拡散
色とりどりの草花に彩られた平原は、邪悪さを寄せ付けない。
動物たちの絶え間ない息づかいに、そっと耳を澄ませると、圧倒的な調和の前に、僕はただ佇むだけ。
石像のように固まる僕の頬を、優しく撫でるように
「キミはどこから来たの?これからどこへ行くの?」
僕は微笑み、そして答える。
「僕は未来から来たんだ。そして過去に行くんだよ」
「未来はどんな所?過去には、何があるの?」
目を閉じて、辿ってきた未来を、僕は思い返す。
だけど、思い出そうとしても、何も思い出せない。まっ白な闇が脳内を覆い、記憶を
「それが分からない。何も思い出せないんだ。きっとこの時間軸の世界線と、僕が来た時間軸の世界線の相互作用によって、意識が拡散されたせいかな」
そのような理論が書かれた本を、僕は遠い未来に読んだ事があった。
「そうなんだ。ならどうして過去に行くの?」
「本当の歴史を知りたいんだよ」
「時間軸がズレると、未来は変わるって言ってたけど、じゃあ時間軸がズレたら、過去も変わっちゃうんじゃない?」
「過去は変わらないよ。だって既に起こってしまった事だからね。もう変えようがないのさ」
僕が言うと
「本当の事、知りたい?」
「君は何を知っているんだい?」
「全部さ。過去も、未来も、全部知っているよ」
「本当に?それなら、僕の過去を教えてほしい。僕が何者なのか」
「この世界には過去も未来も存在しないよ。時間という物質が圧縮されて、
すると
僕は呆然と立ち尽くしたまま。
その途端、僕は怖くなってきた。
全てを知る勇気は僕には無い。知らなくてもいい事も存在するんだと。
調和と拡散 岸亜里沙 @kishiarisa
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