没案2ー0054
没理由・ショートショートを書こうと思い立ち、設定も何も決めず思いつきで書いていたらまあシンプルにおもんない。どこを見ても何かしらのパクリかつ会話の録音という設定のせいで文章の稚拙さが目立つ。
没案2ー0054
さかし
没理由・ショートショートを書こうと思い立ち、設定も何も決めず思いつきで書いていたらまあシンプルにおもんない。どこを見ても何かしらのパクリかつ会話の録音という設定のせいで文章の稚拙さが目立つ。
「0054」
2017年8月8日(水) 録音データ 0054の素起こし 話者・鹿島ヨーコ(仮名)氏
こんにちはー、初めまして。はい、連絡させていただいた鹿島です。はい、本日は宜しくお願いします。
あー、じゃあ私も同じのを。あっすいません、コーヒーフレッシュって二つつけられますか? じゃあお願いします、はい、すいません。
いやぁコーヒーは好きなんですけど、苦いだけのはちょっと。カフェオレですか? あー、実は私ヴィーガンでミルク駄目なんですよ。はい、友達に勧められて。
そう、あれ植物性油脂からできるらしくて、そうですそうです。
いやぁ正直面倒ですよ。シャンプーも動物性のとかあって表示も毎回見たりして。一人でやる分にはいいんですけど、周りにおすすめとかはできないですね。
そりゃ変な目でも見られますけど、まぁ私みたいなのとかやりたい人が勝手にやる分にはいい物なんじゃないかな? って思ってます。ははっ、あんなのと一緒にしないでくださいよ。
あとあのそれって、あっ録音してるんですね。確か作家さんでしたっけ。
あーじゃあこっちから呼んでおいてなんですけど、取材も兼ねてみたいな、えー凄い。緊張しますね。
はい、そっちの方はユズから聞いてます。あぁでも名前とかって、あ、大丈夫なんですね。あぁいや全然使ってください。
じゃあえっと本題に、はい。助けて頂きたいのは私の同僚です。
名前は[Ph]、二十二歳、痩せ気味で茶髪の子です。
はい、同じ時期の募集で入って、歳も近かったのですぐに仲良くなって。結構な頻度でご飯とか、プライベートでも遊ぶことが多かったです。
彼女と最後に会ってからもう二週間になります。恐らくあの日の事が原因で彼女は失踪してしまったんだと思うんです。
暑い日でした。日は差していましたが、前日に降った雨の影響か湿気った生暖かい風が軽く吹いていて、外に出るのも躊躇うような気持ちの悪い暑さでした。
その日はたまたまバイト先のジュエリーショップが昼までの営業で、その子とは仕事終わりにランチに行く予定でした。
うちの店ではちょっとお高めのブランドものの宝飾なんかを多く取り扱ってて、訪問販売が基本なんです。訪問って言っても押しかけとかじゃなくて、カタログを配って電話を受けたら向かうみたいな感じです。
いつもは社員の先輩と二人で社用車に乗って訪問するんですが、その日は店舗の改装着工日で、社員さんは店舗責任者の方しか来ていませんでした。
その日の営業はバイトメンバーのみで回すことになっていて、私は彼女とバディを組んで訪問に向かいました。業務は順調に進み、あと二軒でその日の予約は終わる、そんなところでした。
準備段階から薄々気付いてはいたんですが、次のお客さんに持ってくるよう言われた商品が異様な雰囲気があって。真珠のネックレスだったんですが、なんというかその、汚いんです。全体的に。
とにかく見た目が黄ばんでるというか、エクボも酷くてほぼ尖ってるみたいな。あぁすいません。エクボっていうのは天然の真珠にできる凹凸の傷のことで、はい。やっぱり真珠といえば綺麗な球を求める方が多くて、基本こういうものは需要がないから捨てられたりするんです。
でもそんな低質の真珠が、わざわざ加工されて店に置いてたんです。しかも相場以上の値段で。
こんなものカタログに載せるとか、店側もどうかしてるんじゃないかと思ったんですが、実際持ってきて欲しいという買い手がいるのにびっくりして。なにか特別なものなんじゃないかとも勘繰りましたが、それ以上は考えても無駄と思ってやめました。
まぁ呼ばれたらこちらは出向くしか無いので、メモに書いてある住所をカーナビに打ち込んで、その場所に向かったんです。はい、運転していたのは彼女でした。
住所自体に特別おかしなところはなかったです。お店から二、三市跨いだくらいの距離で地名も聞いたことのあるものでした。
住宅地に入ったくらいで、もうすぐ着くかなとか思ってたら、そこも抜けて、山の方へ向かっていくんです。最初はまだ人気がありましたが、次第に走っていた大道をそれて横の細い道に入ったんです。なにか変だとは思いながらも、カーナビの通り走っているだけなので気には留めませんでした。
5分も経たないうちに、墓地に入りました。かなり大規模な墓地らしく、夥しい数の墓石が所狭しと並んでいました。一瞬ゾッとしましたが、奥にあるお寺も、手入れが行き届いている様子だったので、怖いというより先に、こんな所に家があるのか? という疑問が湧きました。
問題はこの後です。お寺を横切ると、道が更に狭くなったんです。対向車はまず確実に避けられない、軽でもかろうじて進める程度の幅でした。それから、明らかに山を登ってるんです。舗装こそされていましたが、鬱蒼とした山道で車が走るにはありえない傾斜でした。
ようやく異常さに気付いた私は彼女に、ここはおかしい、戻るべきだと伝えました。でも彼女は、「絶対あるから」「この上に居る」と頑なに車を走らせました。何度言っても聞かないので、私は泣きそうになりながら叫び、彼女の声もそれに呼応するように大きくなりました。
十分ほどでしょうか、そんなやりとりを繰り返した後、車は止まりました。カーナビは無機質な音声で「目的地に到着しました。お疲れ様でした。」と言ってプツンと切れました。行き止まりでした。目の前には大きく開いた門があって、周囲は少しひらけていました。門の向こうにある建物は、さっきのお寺の本堂といった風貌で、違うのは手入れされた様子がないほどさびれていたこと。そして、御札が貼ってあったこと。一枚や二枚じゃないんです。閉まっていた戸が見えなくなるくらい、びっしりと。
異質な空気でした。外がやけに明るかったのを覚えています。重苦しい沈黙が続きました。時間にして一分、もっと短いくらいなんでしょうが、極度の緊張で数時間はそこに居た気さえします。
「帰ろう」
そう言って彼女はもときた道へUターンしました。バックミラーはあえて見ず、私も硬直したように正面だけを向いて山を下りました。
残りの業務を済ませた後、すぐ帰路につきました。ランチなんて言い出せませんでした。
三日経って店舗の改装が終わり、出勤日に彼女の姿はありませんでした。無断欠勤する様な子ではなかったです。
電話にも出ないため、思い切って会いに行きましたが、インターホンを鳴らして出てきたのは彼女の母親でした。そこで彼女が失踪したことを知りました。
四日前に彼女から連絡があったんです。家の固定電話に留守電が入ってました。スマホ以外の連絡先を教えたことはなかったのですが間違いなく彼女のケータイからでした。急いで確認すると、聞こえてきたのは彼女の声じゃなかった。複数人、恐らく五人ほどの男女の声が重なって聞こえました。
「わだまもてわたれ」
これが起こったことの全てです。あの日から私も消えてしまうんじゃないかと気が気でなくて。けれど今は、彼女の安否が何より心配です。
は
(声量が微小な為、聴取不能。1分54秒)
同一録音データの素起こし 話者・子安イオリ(仮名)氏
初めまして、子安と申します。はい、宜しくお願いします。
とりあえずなにか飲み物でも、私はアイスコーヒーで。カフェオレなんかじゃ駄目なんですか。あーそういう、フレッシュって大丈夫なんですね。マーガリンとかそういう感じの?
へぇ、凄い。今のご時世大変じゃないですか。そうなんですね、失礼な話ネットの影響で皆過激派みたいな偏見が。すみません、ははっ。
これですか? あぁお伝えし忘れてました。テレコですよ、はい、そうですね。あそれから、この話は僕の著作の参考にさせて頂いても、あっありがとうございます。あーそっちの方は全然直接は、はい、あ、ありがとうございます。
はい、できるだけ詳しくお願いします。はい。
(子安氏の相槌が続く。7分45秒)
今の話を聞いて確信しましたが、貴方、嘘ついてますよね。
ヴィーガンに誘ってきた友人とは彼女ですよね。周囲には勧めたくないと伺いましたが。その時点では友人と仰ったのに、後に同僚という表現をしたのは何故ですか。
話にも違和感があったんですよね。そんな高価な宝飾を扱った店で、バイトのみの営業日があるとは思えない。仕事で二人になる不自然さを隠す為の嘘ではないですか。
情景の鮮明さに些か疑問は残りますが、おそらくは本堂のくだりも虚偽。二人で山に入った部分は事実でしょうか。
一週間前に、●●山で[Ph]さんの遺体が見つかりました。死因は絞殺。現場にあったネックレスは犯行に使用されたものだそうです。貴方が殺したんですね。
ごめんなさい、私も嘘をつきました。専門家としての相談ではなく捜査協力だったんです。貴方が何を話すか大体知っていました。笹井さん実は公安の方なんです。そして最初から貴方を疑っていた。話を聞いた時は驚いていましたが、今朝検証が終わって確信したそうです。
貴方の過去も調べさせて頂きました。統合失調症の既往歴がありますね。殺人の記憶をも良くできた怪談話に捏造、脳とは恐ろしいものですね。
それと最後に、現場のネックレスには酷い傷も汚れも見られなかったそうです。シゾの方にこんなことを聞くのは可笑しいかもしれませんがどうしても引っかかって。貴方には何が見えていたんですか。
補遺・その後現場に突入した警察官数名により鹿島氏は逮捕。二ヶ月後、鹿島氏は警察病院の精神病棟で死亡。複数の宝飾、主に真珠を飲み込んだことによる窒息死であったが、その出処は不明。
同日、子安氏は失踪し現在は行方不明となっている。失踪の直前、子安氏は「わだま」若しくは「またま」について周囲に尋ね回っていたという。
また、音声内で言及のある「笹井ユズ」という人物についての記録が見つかっておらず、子安氏の捜索と重ねて調査されている。
没案2ー0054 さかし @amatsu_shuri
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