第5話

 母が急な病に倒れ、帰らぬ人となったのだ。

 母が病没してすぐ、父は愛人を正妻として迎え入れた。


 それがエマニーズだった。彼女には父に似た髪と瞳を持つ娘、ティアリスがいた。彼女はセレスティーンの一つ年下で、つまりは母が生きていたころから父とエマニーズはねんごろになっていたのだ。


「私が来たからには、あなたをしっかりとしつけます」

 憎悪がたぎる目でエマニーズに睨まれ、セレスティーンは怯えた。

 その日から彼女は召使としてエマニーズとティアリスにこき使われることとなった。


 平民上がりのエマニーズとティアリスは生粋の貴族であるセレスティーンを敵視していた。ティアリスに至ってはセレスティーンが長年にわたって父を独占していたと思い込み、その憎悪はいっそエマニーズよりも深い。


 セレスティーンは、日が昇ると同時に起き出し、使用人と一緒に掃除をしたり料理をしたりして過ごした。食事はエマニーズからの罰で抜かれることが多く、お腹をすかせて夜を迎えることが多々あった。


 しつけと称して殴られることは日常で、エマニーズとティアリスのわがままに振り回された。雨の降る夜に、とうに閉まった店にりんごを買いに行かされたときもある。


 父であるマルセルムは虐待に対してまったく何も言わなかった。父からの愛がかけらも存在しないことに絶望したが、父と実母が意に沿わぬ政略結婚だったと知り、なんだか納得してしまった。


 メイドたちは概してセレスティーンに同情的で優しかったが、女主人となったエマニーズに逆らえず、彼女がいじめられていても助けてくれることはなかった。


 そうして十一年が経過し、今は十七歳。

 今日も朝からメイドたちに混じって掃除をし、料理をして働く。

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