第4話
本来なら男爵の令嬢である彼女が身につけることなど一生ないはずのものだったが、母をなくした彼女は継母に命じられて今はメイドと同樣の扱いを受けている。
「それでも衣食住があるだけましだわ、きっと」
屋敷の外に捨てられたら、もうどう生きていけばいいのかわからない。娼館に売られたわけでもないのだし、と思ってからため息をついた。
首筋に奇妙な形の痣のある自分は傷物と言われて娼館にも売れないと文句を言われた。その痣は魔族の紋章に似ていて、一説には魔族が嫁にすると定めた者につけると言われている。
そんなの迷信だと思うが、今でも魔族を怖れる者は多くて継母たちもその一員だった。だから自分は「傷物」と呼ばれ、忌み嫌われている。
そのおかげで長いこと男爵令嬢でありながら縁談はなかったが、一年前に年の離れた男性との縁談を親に決められた。年内にはその男のもとへ嫁がなくてはならない。
だからだろう、とセレスティーンは思っている。夢を見始めたのもそのころで、あんな素敵な人が自分をここから連れ出してくれたなら。そんな夢を見ているだけだ。
「夢が幸せなぶん、けっこう現実がきついかも」
セレスティーンはため息をつき、屋根裏部屋をあとにした。
セレスティーンが子どものときは母がいて、なに不自由なく育っていた。
父親は家族に見向きもせず外に愛人を作ったが、母が父の不在を感じさせないほどに慈しんでくれた。
召使たちも彼女に優しくて、彼女はすくすくと育った。
六歳のとき、悲劇は起きた。
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