第2話 祖父との思いで
僕の楽しみは、毎日来る祖父に会うことだった。
病室のベッドに横たわり、管や点滴に囲まれている日でも、ほぼ毎日、祖父が来てくれるので、少しだけ世界は明るかった。
なぜか僕が調子が良い日には、祖父は決まっておもちゃを買ってきてくれた。
小さな手で貰ったおもちゃを握ると、まるで魔法のように悲しみや痛みが溶けていく気がした。
僕はそのおもちゃを抱えて、ベッドの上で小さな冒険をした。
自分より少し小さいモンチッチ、犬のぬいぐるみ、ミニカー。
僕のベッドはおもちゃ屋さんの様だった。
祖父が来るのは、病棟の非常階段から見えた。
だから僕は元気があるときはいつも階段に行っていた。
寝ていても僕が目を覚ます少し前に、そっと階段を登る足音が聞こえる気がする。
それは、まるで僕のためだけに世界が動いているみたいな音だった。
祖父の顔を見つけると、僕の心はぱっと明るくなる。
「今日はどうだい?」
祖父の声には、ただ優しいだけでなく、何か強さも混ざっていた。
僕は少し恥ずかしそうに笑いながら、「おかえり」と答えた。
おもちゃを手渡される瞬間、病室の天井に光が差し込むように感じた。
僕はその光の中で、少しだけ自分が普通の子どもになったような気がした。
ベッドの上でも、管や機械の間でも、心音と機械音にはされていても、祖父がいてくれるだけで、世界は十分に温かかった。
そして祖父は、毎日変わらずベットの横に座り、僕を見守ってくれた。
その姿を見ると、痛みも孤独も寂しさも、少しずつ遠くに消えていくようだった。
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