2-3

 テストが終わった時、直陽はあまねにLINEを送った。


直陽:「さっきは突然ごめん。俺も成瀬さんがあんな風に話すのは初めて見たんだ」


 レポート書きが残っていたのでキャンパス内の図書館に入る。テスト中ということもあって混んでいた。レポートに必要な書籍を見つけ、たまたま空いていた近くの席に座る。

 スマホを見てみるが、既読にならない。

 社会学の本で、民族とエスニックグループの違い、そんな内容だったが、頭に入ってこない。

 気が付くと五分おきぐらいにスマホを確認していた。

 二時間以上たったがそれでも既読は付かなかった。

 気にしているのが馬鹿らしくなり、電源を切って、レポートに集中した。

 閉館の夜八時になった。混んでいた図書館はだいぶまばらになっている。

 地下鉄の駅まで歩く。

 考えないようにしていたスマホがやはり気になりだした。駅に着き、ホームで電車を待っている時に電源を入れた。

 起動するまでの時間がもどかしかった。

 LINEを開いて、あまねとのトーク画面を開く。が、既読はなおも付いていない。

 俺は何をしているのだろう。直陽は自分が恥ずかしくなってきた。入ってきた地下鉄の起こす風が、直陽の頬に強く打ちつける。

 帰りのバスに乗っていた時に返信が来た。


あまね:「返信遅くなってごめん。電池が切れちゃってて。琴葉ちゃん、元気な人だったね。それと、ちょっと言いにくいんだけど、琴葉ちゃんも小説コラボに参加してくれることになった。」


直陽はそのまま返信をした。


直陽:「それは、俺が撮る人物写真に参加してくれるってこと?」


あまね:「そういう意味じゃなくて、琴葉ちゃんも写真を自分で撮って送ってくれるってこと」


 直陽の心臓がドキンと波打つのが分かった。そして既視感のある、押し寄せる痛み。


直陽:「そっか。協力してくれる人が増えて良かったね!」


あまね:「うん、写真部、いい人たちばかりだね!」


 それ以上は何も聞きたくなかった。

 俺は何に苦しんでいるのだろう。何が不満なのだろう。

 直陽はそれが分からないわけではなかった。ただ分かりたくなかった。その思いと向き合いたくないと思っていたのだ。向き合ってしまえば、自分の醜い姿を認めることになってしまうから。

 その日はもう何も考えたくなかった。

 スマホの電源を切り、布団に入って目を閉じた。


――――――――


**次回予告(2-4)**

傷付きやすい自分の性格を再確認してしまう直陽。校舎内の談話コーナーにあまねを見かけるが⋯。

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