第5話 罪と罰

《昨年度の子どもの自殺者数が、五二九人と過去最多になり、厚生労働省はこのことを受け・・、小中高生の・・》



 深田君をいじめていたヤンキーの柳瀬君は、立派に更生して、今では家庭を持ち、奥さんと子どもがいる。

 深田君は今も、心を病み、家に引きこもったままだ――。



 すべてを捨ててしまいたくなる時がある。この意識に溜まった混沌をすべて捨ててしまいたい。

 そう思う時がある。



 世の中の遊戯や娯楽や快楽に満足を感ずることなく

 心ひかれることなく

 身の装飾を離れて

 真実を語り

 犀の角のようにただ独り歩め


                  スッタニパータ

 


「副業で今なら、月収三十万円可。誰でもできる・・、スキル不要・・、」

 今の世の中は、こんなのばかり。


 正しくないお金で贅沢な暮らしをする人間たちが、今日もうれしそうに、安全な場所からドヤ顔で笑う。



 ブッダ

 利益と尊敬と名声とは

 惨く苦く粗野なもので

 自由な境地を妨げます

「この偉大な人物はたとえ銀粉で満たされた

 黄金の鉢を渡されても嘘はつかないだろう」

 と思った人物が、

 のちに利益と尊敬と名声に打ち負かされ、

 虚偽を口にするのをわたしは見ました


                   相応部一七ー一一



 この国は腐っている。それをみんな薄々知っている。でも、何も変わりはしない。



《スクープ、東京都知事小池百合子カイロ大卒業、学歴詐称疑惑。小池百合子のカイロ大時代の元同居人が実名告白》


《東京都知事選で、百六十万票取った石丸氏、石丸新党結成か》


《兵庫県知事選挙・斎藤元彦、立花孝志と二馬力、ネットデマ横行、公職選挙法違反の疑惑の再選》


《今夏の参院選で、デマで排外主義を煽ったカルト極右、参政党大躍進》


《裏金問題や、統一教会との関係が大きく報道されていた自民党の萩生田光一氏の再選が確定したとの・・》


 最近、こんなのばかり。



 社会はすべて狂人によって動かされている


                  ジョン・レノン



『今の世の中うまく立ち回れるのは、知能の高いサイコパスだけ』

 回覧して来たツイート。



 富は多くの者を貪欲にする。

 それはよろめきながら破滅へと向かう隊商のようなものだ。

 利己心の罪を増し

 所有欲を断とうとする心を妨げる富は

 自分を守るものではなく障害物である。


            ジャータカ・マーラー



 その名声の嘘を僕は知っている。その美しさの嘘を僕は知っている。その肩書の嘘を僕は知っている。

 でも、世間はそのことを誰も知らない。



「東大卒は犯罪者が少ないんですよ」

 自信満々に言う灘高出身東大卒エリート精神科医。


「捕まっていないだけだろ」

 僕は叫ぶ。

 原発事故、公害、薬害、天下り、セクハラ、パワハラ、隠蔽、捏造、汚職、環境汚染、環境破壊・・、どれだけの大罪を学歴エリートたちがこれまでに犯して来たか。そして、彼らは決して捕まらない。



 まだ悪の報いが熟しないあいだは

 悪人でも幸運に遭うことがある。

 しかし悪の報いが熟したときには

 悪人は禍(わざわ)いに遭う。


                  ダンマパダ



 また選挙が始まる。組織票が勝つ形骸化した民主主義。

 

 投開票の日。僕は早々に眠りにつく。

 明日も仕事。

 政権交代したら起こしてくれ。

 しないならもう起こさなくていい。



 ―――



 結局、僕は目覚める。また、あの暗く冷たい世界。

 そこは生きていない世界。


 結局、あいつはまた当選した。


 選挙なんて嘘をついたもん勝ちさ。



 そして、僕は今日も新聞を配る。


 この国はとっくの昔に終わっていたのかもしれない・・。

 ふと思う。


 

 世の中は行為によって成り立ち

 人々の人生も行為によって成り立つ

 生きとし生けるものは

 業(カルマ・行為の結果)に束縛されている


                   スッタニパータ

  


 人生に失敗したのは僕のせいだ。

 

 でも、失敗がすべて自己責任だったら、国も税金もいらなくないか?


 でも、この理屈がこの世界で通用しないことも僕は知っている。だから、僕は今日も絶望しているんだ。

 


 農夫は自分の畑をよく耕し

 土をならす

 しかし農夫が魔法の力や権力で

「作物が今日芽を出すように

 明日は穂が出るように

 その次の日にはそれが実るように」

 と命じることが出来るだろうか

 出来はしない

 作物が成長するのは

 その季節が巡って来た時のみなのである


                 アングッタラニカーヤ

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