日々
ぬん
第1話
…
…また、視線を感じる
何もないってわかってるのに、体が強張る
どうせ、何もないんだから急いでもしょうがないのに
私は、洗面台で顔を洗う時、後ろから視線を感じる。
でもそれは、いつも思い込みで実際には何もない。
それをわかっていても顔を洗う手が早くなる。
早く水で流して目を開けて、後ろを確認したい。
確認しなきゃいけないと強迫観念に至ってしまう。
…はぁ
後ろにクッションでも置こうかな…
…
あれ?タオルがない
どっかに落としたのかな…
私は、特に何も考えずに新しいタオルを取り出して
顔を拭いた後に、自室に向かった。
視線はいつものこと。
…ドン!
「うわ!」
洗面台のドアが勝手に
しまった。ただそれだけだった。なのに
勢い良くしまった扉は跳ね返って少し開いた
そこにはいた。絶対に”なにか"がいた。
黒くて、デカくて…
壁に掛けていたタオルがそう見えただけかも
そう思いたかった…でもタイミングが悪い
タオルは今、私の手元にある。
今の状況を理屈で説明できない。
扉は今も開いている。
私はその"なにか"と目が合っている。
電気は消えていて暗くて、影しか見えない。
目があるのかもわからない。でも、
確かに、私を認識してこちらをみている。
私はこの状況で、なにをすればいいのか
真っ白になった頭で必死に考える。わからない。
自室に行くか、家を出るか、でも本能的に
その"なにか"と目を離してはいけないと感じている
目を離したら、何か起こる。もしかしたら
こっちにくるのかも知れない。もしこっちに来たら、
私に"なにか"が触れたら…
私は、その後のことは今考えてはいけない
そう思った。
そう思わなきゃ良くないことが起きる気がした。
私はやっと理解した。今、私の目の前にいるのは
得体の知れない"なにか"ではない。
私は知っている。この存在が何なのかを。
日々 ぬん @kokoa118
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