いろいろと考えさせられる作品でした。
主人公はある田舎の村で生まれ育つ。そこに住む人々は、都会に憧れながらも、様々な理由でそこを離れられず、やがてここにいるのが自分の幸せだと妥協するようになる。
主人公はそれが気にくわなかったが、口にだす勇気もなく、ずっと不満を抱えながらそこで生きている。
ある日、そんな村で映画の撮影が行われることになる。
なにか変わるかもしれないと主人公は希望を抱くが、しかし、短い夢を見ることができただけで、撮影隊が去った後、なにも変わらなかったことに気づく。
現実と夢の甚だしい乖離に気づかされ、余計苦しむ中、今度はある政治家がこの村に来るという話を聞く。
そして彼はあることをしようと考えた、それがなにかは……気になった方は実際に読んで確かめてみてください。
どうでもいいかもしれませんが、私はわりと都会で生まれ育ったんですけど、母方の祖母の家がかなりの田舎にあって、車を三十分以上は走らせないと、コンビニもデパートもないようなところなんで、そりゃあもう不便でしたよ。こんなとこでずっと生活するとか嫌だなあって思っていたので、この主人公の気持ちはとてもわかります。
でも、彼はちょっと都会に対して幻想を抱きすぎな気がするんですよね。都会は都会で汚いことだらけですよ。結局、どこにだって闇はあるんです。
たぶん、彼は都会に行ったら行ったで、思っていたのと違ってがっかりするんじゃないかという気がしますね。
ネタバレになっちゃうんで詳しくは言えませんが(いや、もしかしたら既にかなりネタバレしてしまっているかもしれませんが)、最後まで読んで思ったのは、結局、この主人公は何者にもなれていないんじゃないかってことですね。
何者かになれたと思っているだけで、実際は最初からずっと中身は空虚な気がするんです。
この作品の結末はべつに不幸な終わり方じゃないけど、この先、この主人公にあまり幸せな人生が待っていなさそうな気がするのは、私だけでしょうか?
長々と語ってしまいましたが、大変面白い作品でした。おすすめです。
主人公はとある村に生まれ、その村で育ってきた。
大人になっても作業場で樹木を伐採する日々の繰り返し。
同僚の佐藤との会話に面白みを感じることもない。
そんな毎日にうんざりしていたのだが、ある日、村に映画の撮影班がやってきた。
村人たちは嬉々として、撮影風景を覗きに行く。
主人公もまたそんな村人たちに混じるが、そこで疎外感を感じてしまい――。
「この村がら出でだきゃ、有名になるが、人ば殺すがだ」
第一話でのこの台詞、とても強烈ですが、主人公の視点から描かれる村の雰囲気はまさにこの台詞に表されております。
退屈な村での暮らし。
そんな日々に殺されかけてる主人公の心は、絶えず村の外部、テレビの向こう側、キラキラとした都会風景へと飛んでいく。
「神様」に自分の存在を気付いてもらたい……祈りにも似た思いを抱いて生きているのですが、村の生き方に縛られていたままでは、その想いも空しいまま。
誰にも気づかれないままに人生を終えてしまうのか?
と、そこに千載一遇のチャンスが!
鬱屈した心が外部を求めて、どのようにねじれて飛び出していくか……そしてその結末はいかに!?
是非ともご一読の上、お確かめ下さい!!!
SB亭moyaさんには毎回やられっぱなしですが、今回もまたやられた。
田舎の村で暮らす主人公、何の変化もない日常に飽き飽きしていた。こんな村にいても、この世界に自分の存在はない。
世界に自分の存在を知らせるには、何か大きな事を成し遂げなければならない。そう考えた主人公(名前もない)は、あるとんでもない事を企てる。
主人公の喋りは、どこかわからないが地方の方言だ。それが田舎の村という閉鎖的な雰囲気を醸し出している。
映画の撮影が村で行われる場面がある。一昔前、私の実家のある田舎で映画撮影があった時、父親は毎日仕事を放り出して見に行った。田舎では一大イベントだった。
現代ドラマというジャンルだが、ミステリー要素を多分に含み、いつものことだが最終話のどんでん返しには驚かされる事だろう。
よくこんな面白い傑作を書けるなぁと、毎回毎回驚きと羨望の思いで読んでいます。五話完結で各話も短いのですぐ読めます。
コメント欄も楽しいのでどうぞ覗いてみてください!
田舎の村ならではの閉塞感。それが切実に伝わってくる作品でした。
主人公は、とある田舎の村に暮らしている。そこにいる人間たちは、基本的に村を出ることができない。出られるとしたら、それは「有名になるか、人を殺すか」のどちらかになっているという。
都会からテレビ局の人間たちがやってくるが、都会に住む彼らの目には住人である「彼ら」の存在は「見えない」ものとなっている。
あくまでも風景の一部のようなもので、存在感が希薄になっている。
自分という人間は、あくまでも村の一部。野に住む獣たちと同じように、「個人」としてはろくに認識もされず、しっかりと「人」として生きているという自覚も得られないでいる。
そんなどうしようもない感覚に苛まれつつ生きる中で、「彼」はついに「あること」を決意するが……。
「自己」というものについての問題。自分がただの「村の一部」に過ぎないという事実の前に、アイデンティティに悩まされる主人公。
彼の切実な想いは、方言まみれの一人称によって強く読者の心にも響いてきます。
もしかしたら、彼らは人間ではない別の何かなのではないか。読んでいる途中にそんな風に思わされるほど、「人間らしさ」が希薄になっている環境。
この圧倒的な閉塞感と自己否定の感覚。強烈に心に迫ってくること間違いなしです。