行動しやすくなる言葉



 朝、机に向かっても、なかなか作業が進まない日がある。「やらなきゃ」と呟くたびに「やりたくない」という気持ちが大きくなる。 

 僕にとって、「やらねばならない」は身体を動かすスイッチにならない。そう自分に命令するときはたいてい、

 

――誰かに評価されたい。

――怠けていると思われたくない。

 

 こうした義務感や不安からの圧力が動機になっている。「やらなければ……」と言葉にした瞬間、心は萎縮し、身体は防御の姿勢を取る。

 一方で、「やりたい」は好奇心や内側の欲求から出てくる。そのとき、身体は自然に動く準備を整える。

 

 「やらねばならない」という言葉には、行為の主導権がなく、「やりたい」という言葉の中には、行為を自分で選び取っているという感覚がある。


   ***

 

 あるとき、「学ばなければ」ではなく「理解したい」「知識を使ってみたい」と思ったら、インプット作業への没入度がまるで違った。

 「やらねばならない」を「やりたい」に置き換えることは、自分の行為をもう一度 “自分のもの” として取り戻す行為になるのかもしれない。

 だとしたら、これは単なる言い換えではなく、思考と身体のスイッチを同時に切り替える行為になり得そうだ。

 

 行動は、言葉の選び方から始まっているのだと思う。

 

 そう感じるようになってから、目標を立てるとき、言葉選びに以前よりも気を配るようになった。できるだけ、自分が行動しやすくなる言葉を選んでいる。


 

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掌編エッセイ - 探究と観察 - 維枦八(いろはち) @iro-hachi

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