第37話 記者会見


 ダンジョンから出るとマスコミは外で待機している様だ。

「はぁ、どうやって出るかな?」

「あ!里見さん!」

 と野太い声のゴツい男、ギルマスの堂本だ。


「なんだ?」

「いや、そんな邪険にしないでください」

「ふぅ、まぁいいだろ。何の用だ?」

「記者会見やりませんか?」

「やらん」

 誰が好き好んでそんなもんやるかよ!

「えぇ!このままだとずっといるんですよ?流石にこの派出所も困ってしまいます」

「もっと困ればいい」

 おっと、つい本音が出てしまった。

「な、里見さんがここでバシッと決めてくれればいいんですから」

「他人事だと思いやがって、俺は別に有名になりたく無いんだが?」

「私も同席しますから?ね?」

 

 流石にこれ以上は無理か。

「…………はぁ、分かった」

 と言うとギルマスが張り切って外にテーブルなどを設置し始める。


「あいつ……」

 楽しそうに指揮をとってるその尻を蹴飛ばしたい。


「準備整いました!」

「……はぁ」

「ほらほら、さぁ、行きましょう」

 と背中を押されて防具のままで出て行く。

 “パシャパシャ”とシャッター音が鳴るとフラッシュで目が眩むがなんとか座らされ、横には笑顔のギルマスが立つ。

「多いな」

 とても一般市民に対してのマスコミの数じゃないだろ!


「さて、これより記者会見を始めますので時間は10分とさせていただきます!」


「はぁ、まずは知りたいと思うので俺から、氷室さんから俺にパーティーの話があり、パーティー発足となったわけですが、俺のジョブ、経歴などは伏せさせて頂きますのでご了承下さい」

 と言葉を発すると、ざわつくマスコミ。

「はい」

「ではそちらの方」

「MMMの青木と言います。氷室さんからパーティーをと言うことでしたが、どの様にアプローチされたのですか?」

「試験的に一回パーティーを組みダンジョンで一緒に活動してから加入の方をしました」

 

「はい!」

「はい、ではそちらの方」

「毎探の田中と言います。貴方のお名前と他に言えることがあれば」

「里見瑠夏といいます。あとは話すことはないですね」


「はい!」

「そちらの方」

「Tテレの小林と申します。氷室さんとの関係は?」

「パーティーメンバー以上でも以下でもないですね」


「はいーー」

 とくだらない話に付き合うと、

「はい!」

「ではそちらの方で最後ですね」

「はい、東探の鈴木です。さっき私は脅されましたがどう言うことですか?」

「あぁ、尻餅をついて怯えてた人ですね?脅した覚えはありませんが?ただ、失礼なことを言う人だなぁと、近寄って行っただけですけど、え?あれは脅しになるんですか?」

 俺はバカにしたように戯けると、

「お、脅しただろ!こっちは取材で「はい、そこまでで終わりですね」クッ!」


 失笑が起こっているので鈴木は恥ずかしそうにこの場を去る。


 ようやく派出所に入ると、

「よく我慢しましたね、ありがとうございます」

「はぁ、場所替えも考えないとな」

「い、いえ、そんな事しないでくださいよ」

 と泣きつく堂本。

「まぁ、これで終わりならそれでいいか」

「そ、そうですよ、一回やったらそれで収まりますって」

「そうなればいいな!」

 とやり遂げた感があったので気分良く更衣室で着替えて外に出るとまだ片付けをしているマスコミを無視して車でマンションに向かう。

 そのまま歩いて居酒屋に入って飲んでいると、スマホが鳴る。


「よぉ、ツネか?」

『よぉ、凄いな、時の人だな?』

「あ?俺はそんなものになったつもりはないぞ」

『ニュースになってるぞ?』

「ふん、まぁいいんだよ、これでウザイのが終われば」

『んー、そううまく行くかな?』

「行くだろ?じゃないと記者会見なんてものしなかったしな!」

『そうか、んじゃまた飲みに行こうぜ!』

「おう!またな」

 と言って通話を切ると飲みながらネットを見る。

「ぶふッ!エホッゴホッゴホッ!」

 流石に吹いてしまった。すぐにおしぼりをもらいテーブルを拭く。


『『氷剣姫』のお相手、里見瑠夏とは!』

 と俺は一言もそんなこと言ってないだろ?

 

 その他にも有る事無い事書いてあるのでどれが嘘か分かる、書いてるのは東探の記事だな。

 これは流石に看過できない。

 すぐにこの記事を書いたやつに連絡を取りたいが、もう電話は通じないだろうな。

 と思ったら記事が消されて行く?検索してもヒットしなくなった。


 電話がかかってきて、

「はい?」

『あ、ルカですか?何故記者会見を?』

「ん?カグヤか、俺が1人でダンジョンに行ったらこうなってな」

『そうでしたか、この東探の鈴木と言う男の記事は嘘ですので即刻削除、クビにしてもらいました』

「あぁ、助かるよ」

『いえ、まぁ、明日のニュースはこの事で持ちきりでしょうね?』

 悪い事をしたな。

「はぁ、悪いな」

『まぁ、ちゃんと発言してましたし、どうにかなります』

「おう、ありがとな」

『それでは、おやすみなさい』

 と通話が切れる。

 まだ寝るには早いぞ?まぁ、いいか。


 とりあえずカグヤがやってくれたし、俺は酒を飲もう!


 いい感じで酔って部屋に帰る。ビールを出してソファーに座りテレビをつけると俺が出ている。

 不思議な気分だな。

 よく見ると俺は悪い顔してるな。

 さすがに見てられなくてテレビを消す。

「あはははは!テレビ向けじゃないんだよな!ツネとかだったらスマートに行けたと思うけど」

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