【切ない恋愛小説】消えた記憶の中の君 ~忘れられない人と忘れられた恋~
雨音|言葉を紡ぐ人
第1話 白い天井
目を開けると、白い天井が見えた。
「ここは...?」
体を起こそうとすると、頭に鈍い痛みが走った。
「あ、目が覚めたんですね」
看護師さんが駆け寄ってきた。
「ここは、病院です。交通事故に遭われて、三日間意識不明でした」
交通事故。記憶を辿ろうとしたけれど、曖昧だった。
「事故...?」
「はい。でも、命に別状はありません。ただ...」
看護師さんは言葉を濁した。
「ただ?」
「お医者様から説明があると思います」
その日の午後、医師が来た。
「記憶に、問題があります」
医師は真剣な顔をしていた。
「事故の衝撃で、この一年間の記憶を失われています」
「一年間...?」
「ええ。一年前から事故までの記憶が、すっぽり抜けています」
信じられなかった。一年間。何があったのか、全くわからない。
その夜、母が病室に来た。
「春菜、大丈夫?」
「うん。でも、記憶が...」
母は悲しそうな顔をした。
「お医者様から聞いたわ。大変だったわね」
「ねえ、お母さん。この一年、私に何があったの?」
母は少し迷って、答えた。
「色々あったわ。仕事のこと、引っ越しのこと...それから」
「それから?」
「恋人ができたのよ。素敵な人」
心臓が跳ねた。
「恋人...?」
「ええ。明日、彼が来るって」
その言葉に、不安になった。私には、全く記憶のない恋人。
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