02「ダーリン、お前の対価が愛だとして、お前の値段が愛だとする。愛というXになにを代入すれば満足か? 」



 生きるためには対価が必要だ。対価を払うには資産が必要だ。資産を保つには、牙が必要だ。

 とりわけこのオルドポルターでは人智を凌駕する厄災が市民の生活を脅かしてやまない。非日常が日常で、平常が異常なのだ。彼らダーリンへ対抗する組織があったとして、その組織も万全ではない。いかなる都市にも、完全な正義などは存在しないように!

 「ダーリン」はお前を守る地獄の甘い恋人じゃない。無差別かつ無作為の厄災。予測不可能の生体現象。生と秩序への反証だ。警鐘もなしに現れて、法もなしに暴れ回って、償いもなしに地獄へと還っていく。ダーリンの異能の前では私たち市民の生命や人権なんて、紙切れ1枚の証明でしかないって、断言しちゃっていいよ。


 生命は貼り付けられた値札を保ち続けるには、商品自身が牙を持たねばならない。それができないのならば、生命を落としても文句は言わないこと。不平等に平等の世界だ。———お前だって、それを了承して生きてるんでしょ?

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る