第2話

電車の中で眠りそうだったので、片方だけイヤフォンをつけていた。いつもなら自然に任せて眠るのだけれど、今日はそうはいかなかった。

「何聞いているの。教えてよ。」

隣から質問が来た。

「この曲だけどちょうど眠かったから聞いていたんだ。」

「知ってる。良いよねそれ。ライブでさラストに持ってくるのが多いんだけど、結構ぶっ飛べるよ。」

少しだけ、思い出してしまっていた。この曲は話のきっかけになると思って聞いていたのに、まるでガチ勢みたいになっていた。

「なんで片方だけ。変わってないから少し気になった。」

その質問には正直に答えられなかったので、眠い脳を叩き起こして言葉を探していた。自分にとって、それは言いたくないことのひとつだった。

「電車の音が気持ちいいから。」

「なんで疑問形になってるの。まあ、電車の揺れと音が好きなのは、なんとなくわかるけど。久しぶりに聞こうかしらね。」

そう言いながら、目的地の終点まで、電車に揺られつつ寝ないように気を張っていた。


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