1-11話 連続爆破事件
自宅の最寄り駅に辿り着き、
周囲はすっかり夜になっていて、街灯と夜の看板が通学路を照らしている。
「――二人っきりで夜のデート。たまにはこういうのもいいよなぁ」
「……だから
「うぐっ……。ま、まぁそんなこと言わないでさ。そうだ、この先にデザートが有名な喫茶店があるんだけど……」
「はいはい、それどこ情報? まぁどうせいつもの情報誌だろうけど。
「ぐぬぬ……」
ガックリと肩を落とした
「
「それは当然だよ。これだけしつこくされたらさ」
そんな
「だって
「それはだって、
「仕方ないだろ、ボクは男なんだから、男に言い寄られても応えられないよ」
「ぐぬぬぬぬ……」
(だけど
だが……。
「でもまぁ、たとえボクが女だったとしても、恋愛相手に
「は、はぁっ!? な、何で?」
わずかな可能性を否定する
「だって
「た、退屈? そ、そんな……」
「そう――
「が――――んっ!」
好きな子からの辛辣な言葉にショックを受ける
と、そのとき――。
――ドカァアアンッ!
――突然、爆発音が
日常では聞くことのない響きに
「な、何だ、今の音!?」
「きっと俺のハートが粉々に破裂した時の効果音だよ……」
「脳内SEじゃないから! 現実に聞こえたから、さっきの爆発音!」
きょろきょろと周りを見回すと、ビルの隙間から夜空に向かって白い煙が上がっているのが見えた。
方向は
「何だアレ……ってまさか!」
毎週金曜に起こる『連続爆破事件』。
そして今日は金曜日――。
「行こう、
「あっ、待ってくれよ
慌てて駆け出す
二人は白煙が立ち上る現場へと向かう。
それが二人の運命を大きく変えることになるとは露とも思わずに――。
* * *
その現場は走って一分もかからずに辿り着けた。
線路に平行して通る国道、その道沿いにあるファミリーレストラン。
野次馬が何人か集まって遠巻きに店の様子を窺っている。
爆発現場はそのファミレスだった。
建物が倒壊する程ではないものの、窓ガラスはすべて吹き飛び、周囲に瓦礫をまき散らしている。
「ぐぅう……あぁ……」
「だ、誰か……助け……」
「うぅう……い、痛いよぅ……」
店の中は暗くてよく見えないが、ディナーの時間帯のためか大勢の客がいたようで、倒れた人たちのうめき声が聞こえてくる。
平和な日本ではまずあり得ない、テレビのニュースで見るテロの現場のような、非日常的で阿鼻叫喚の光景だった。
「ど、どうしよう
「え、えっと……そうだ! と、とりあえず警察と救急に電話を……」
目の前の悲惨な状況にパニクりながら、何とか行動を起こそうとする二人。
だがそれよりも前に――
――ウゥウ――ッ!
――ピーポーピーポー!
――サイレンの音が近づいてくる。
すでに他の野次馬が連絡していたようだ。
しばらくすると、パトカーや救急車などの緊急車両が何台も現場に到着した。
「君たち邪魔だ! 下がりなさい!」
救急隊員が野次馬を下がらせ始まる救急作業。
邪魔にならないよう道の端に寄った
「な……んだよコレ……」
「どうして……? 犯人は何でこんな……」
運び出される死傷者たち。
助かった人もいるようだが、明らかに手遅れだろうと分かる被害者も少なくない。
「ひ、ひでぇ……。あれじゃもう……」
呆然と行き交うタンカを見送る
「――ぅぷっ! だ、ダメだ……吐く……」
遺体を見て気持ちが悪くなったのだろう、
「大丈夫か
慌てて
「ほら
「ありがとう
落ち着いた
「……
「そうだと思うよ
連続爆破事件――
それはここ二か月ほど、巷を賑わせている事件の事だ。
これまでに六件の爆破事件が起きている。
その標的は、駅、スーパー、病院、公共施設と様々だが、それなりに人出のある場所という事が共通している。
そして全く同じタイプの爆弾が使われていることから、すべてが同じ犯人の犯行であるとされているのだ。
さらにこの事件の特徴として、すべての事件が金曜日に行われている。
警察が犯人を追っているが、まだ解決の糸口もつかめていないのが現状である。
「そして今日、また事件が起きた」
先日見た連続爆破事件のニュースを思い出しながら唸る
「クソッ! 許せないこんなの! 犯人はなんでこんなことが平気でできるんだよ!」
「
「こんなことが七件も……。いったいどんな理由があって犯人はこんな事を……って、何だあれ?」
思案していた
「赤い光……?」
光源は
店の周りに集まったパトランプの光より、さらに赤く感じる禍々しい光で、見ていると何か不吉な胸騒ぎを覚える。
(な、何だろう……? すごく嫌な予感がする……)
「
そして――。
「な、何だこれ……?」
――二人は見た。
店の裏手の壁に、1メートル程の大きさで書かれた円い図形の落書き。
それが煌々と赤く光っていたのだ。
幾何学模様で描かれた円形のそれは、まるで――。
「ま、魔法陣……?」
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