1-10話 文化祭前日
それから――
文化祭に向けての準備や、文化祭前の中間テストなど、忙しく時間が過ぎていった。
そして――ついに
――文化祭前日。
いよいよ文化祭を明日に控え、
本番直前という事もあって、セットや衣装も本番さながら、通しリハーサルの真っ最中だ。
ちなみに彼らの配役だが――。
予定通り
そして
「僕は異世界人であることを捨て、騎士として君を一生守り続けよう」
「なら私は姫であることを捨て、貴方と共に生きていきます」
そう言って見つめ合うと、騎士とお姫様はキス――したフリの演技――をする。
そんな二人を見守り歓声をあげる国民たち。
その
しかも二人を祝福するはずのシーンで、
(ぐぬぬ、ホントならボクが
ゾクッ――と
(うっ、一瞬寒気が……)
……好きな子からフラれた上に恨まれる、可愛そうな男だった。
――その後も
本番を明日に控え、練習にも熱が入っている様子。
張り切るクラスメイト達の練習時間は長々と続き、もう日も暮れようかという時間になったころ――。
「ちょっと一休みしようよ」
誰からともなく上がったそんな声で、一同は各々休憩をとる。
「ふー、疲れたぁ」
「お疲れ
教室の隅に座り込む
「それにしても……やっぱり奇麗だなぁ。そういうドレスを着てると本物のお姫様にしか見えないよ」
「フフッ、ありがと。テルちゃんも王子様の恰好出来たらよかったのに」
「あー
「――ううん、違うよ」
「へ?」
「オトメちゃんのためじゃない、アタシがテルちゃんと主演をやりたかったんだ」
「え、えっと……それってどういう……?」
「アタシね、テルちゃんのことで、いろいろと分かったことがあるんだ」
「わ、分かったこと? それっていったい……」
「ん~、ナイショ」
「な、なんだよそれ?」
「ウフフ、まだ言えないかなぁ。でも、そうだね……」
少し言葉を詰まらせつつ、はにかみながら
「文化祭が無事に終わったら、その時に話を聞いてくれる?」
「あ、う……うん、分かった……」
今までにない
そのまま何とも言えない空気が二人の間を流れていき――
「こら、あなた達! いつまで学校に残っているのよ!」
そんな空気をぶち壊すような怒鳴り声が教室に響いた。
教室に乗り込んできた怒鳴り声の主は――年のころは四十過ぎ、髪を肩口で切りそろえ、紺のスーツに眼鏡をかけた痩せぎすな女性教師。
「アンタたちが帰らないと、担任の私まで残らないといけないじゃない! とっとと解散しろ! 今日はどうしても早く帰りたいのよ!」
ヒステリックに声を荒げ、鬼の形相で迫る中年の女教師。
その剣幕にビビってしまうクラスメイト達の中、ひとり
「ま、待ってください
「そんな都合なんて知らないわよ! いいから早く帰りなさい!」
「お願いします、先生! もう今日しか練習できないんです!」
「えーい、うるさいうるさい! 帰れっつったら帰りなさい! 帰れ――っ!」
生徒の懇願を一顧だにしない先生の様子に、クラスメイト達も
「さ、
「お願い先生! 高校に入って初めての文化祭なの!」
「教師が生徒の“青春”を邪魔すんじゃねぇ!」
そんなガヤからのヤジを聞いていた
「――“青春”ですって?」
プルプルと震えたと思ったら、唐突に――
「……ふ、ふざけんなぁあっ!」
――と、眼鏡がずれる勢いで叫び声をあげた
「う、うわっ! な、何だ何だ?」
先生の態度の急変に、クラスメイト達は戸惑いを隠せない。
どうやら“青春”は
「社会の厳しさを知らないガキが、モラトリアムの特権を振りかざすんじゃないわよ! 高校時代の“青春”なんてただの思い出で、社会に出たら何の役にも立たないんだから! そんなもののために今の私の生活を邪魔しないでっ! 未来あるアンタらと違って、こっちはもう余裕がないのよぉおおおっ!」
もはや暴走状態の
「や、やべぇっ! 先生がキレた!」
「またヒスか? それとも更年期か?」
「どっちにしろ俺たち若者には手に負えねぇ!」
「これはダメだ、みんな逃げろぉっ!」
――と、蜘蛛の子を散らすように逃げ帰るクラスメイト達。
* * *
「こ、怖かったぁ……。
教室を飛び出した
すると
「
「へぇえ、そんな事が……」
年は40を超え、すぐヒステリックになって怒鳴り散らす、誰からも嫌われるクラス担任。
だが……家庭に問題を抱えていたからだと考えると、少しかわいそうにも思えてくる。
「先生かわいそう……。今度なでなでしてあげないと」
「……やめろ
同情する
そんなうわさ話をしながら、
そこへ――
「待って、
――そう言って現れたのは、
「あ、君は確か……
「はうっ! て、
「……
「ち、違いましたー!
「落ち着いてオトメちゃん。助けてって何があったの?」
「――はっ! そうだった、大変なの! 明日展示する予定だったデータが消えちゃって!」
「えーっ! な、何で!」
「わ、分からない……。あとはプリントアウトすれば終わりだったはずなのに……。明日までに何とか直さないと……」
「大変じゃない! ジュンちゃん部長はなんて言ってるの?」
「それが
「わ、分かった、オトメちゃん。アタシも手伝うから、任せて!」
二つ返事で引き受ける
「ねぇ
「大丈夫、テルちゃんたちは先に帰ってて」
「そういうわけにはいかないだろ。
「
「心配性ねぇ、ケンちゃん。もう高校生なんだし遅くなるくらい平気だって。テルちゃんも心配しないで大丈夫だから」
「だけどさ、今は爆弾事件とかもあって物騒だし……」
すると
「だったら
「ホントに? ありがとうオトメちゃん! ――というわけだから心配しなくて大丈夫。二人とも先に帰ってて」
「……分かったよ、
その言葉に納得した
「それじゃ
――と、乙女に向かってお願いをした。
すると――
「はわわわわっ! わ、分かりました!
――またしてもテンパり始めた
あいかわらず
「ま、任せてください!
「……あ、噛んだ」
顔を真っ赤にしてあがりまくる
だが原因である
「それじゃ
「ありがとうテルちゃん、また明日ね――」
そうして
この後――二人が帰り
「あ、そういえば……
――文化祭が無事に終わったら、その時に話を聞いてくれる?
そんな
今の
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