3:評議会
エスに視線を向けられた二人が出身であるドラストリアという地方には、評議会と呼ばれる主要な貴族が集まって物事を決めるための機関が置かれている。
古い時代、この国を揺るがした龍を倒した勇者の末裔とその仲間たちの子孫が評議会のメンバーとなる。
かつてこの国が王政だった時代、治世に於ける重要な施策には、王が評議会を招集訪問し、一週間かけて評議をする、ということも行われていたらしい。今や、王政国家ではなくなり、体制が激変したこの混迷の時期の最中、一度たりとも評議会の招集も行われた試しがないが。
「確かに、評議会内は大理石が多く使われていた記憶が薄らあるな」
「そうなんですかぁ? ローランくんって北方騎士団だとばかり、カルア思ってましたぁ。だから、評議会って住処みたいなものかと」
「前者の認識には違いは無いのだが、評議会に立ち入っていいのは団のトップクラスのみだ。俺も近しいところまでは上り詰めたが、謁見を認められずに……そこから色々あって、死刑及び除隊処分を受けた故」
じゃあ、とエスは視線をカインに向けた。
「俺? 俺はもっと知らねぇって。ローランが入れねぇのに、俺みたいな下賤の民が入れるわけねぇだろ」
「誰もそこまでカインを下げてないんすけど……」
普段から言葉は粗暴だが、そこに親愛があるのがカインの喋り方だ。しかし、先程キリとライヒェと話したせいか、必要以上に自分を卑下する言い方もその粗暴さも、他人を寄せ付けないための言葉に聞こえてしまう。
以前話を聞いた時に思ったが、カインは評議会に対して、何かしら思うところがありそうだった。ここが彼の心象だとしたら、その大理石の階段はライヒェの分析通り、評議会へ繋がるのかもしれない。
「とりあえず、何かしら手がかりが欲しい。評議会に近づいてみよう」
少なくとも、表立って反対する人は誰も居なかった。
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