書斎

白川津 中々

◾️

「家のことなんだけど……」


「書斎なら作らないからね」 


 俺の言葉に妻はピシャリ。取り付く島もない。


「まだ何も言ってないですが……」


「じゃあ、なに言おうとしてたの?」


「……」


「ほら、やっぱりそうじゃん。絶対に作らないからねそんな無駄な部屋」


「いや、しかし、かっこいいし、家族で使用いただいて大丈夫ですし……」


「かっこよくない。使わない。だいたいあんた本読まないじゃん」


「これを機に読もうかと……あと、ゲームとかプレイヤーとか置いたり……」


「絶対読まない。買って満足するだけ。ブレンダーだってもう使ってないじゃん」


「いや、それはさ……」


「それもなにもないのよ。物なら邪魔だなぁで済むけどさぁ。一部屋作ってやっぱ使わないなんてなったら私多分、許せないんだよね。この部屋なければ寝室もっと広くできたなとか、絶対思っちゃうもん。だからこの話はやめましょう。ね?」


 妻の冷たい視線。気後れ。敗色濃厚。しかし我に秘策あり。今日はとっておきを用意したのだ。


「分かった。なら、書斎は諦めよう」


「よかった。なら、インテリアについて相談したいんだけど」


「ただ、聞いてくれ」


「えぇ? なにぃ?」


「書斎は諦める。その代わり、プレイルームを作ろう」


「……?」


「ピンとこないかな。要は娯楽室だよ。ゲームとかダーツとか置いてさ、君と子供と僕が楽しめる部屋を作りたいんだ。それでついでに本なんかもあって、絶対楽しいと思うんだよね」


「……」


「君と子供と楽しい時間を創造できるような部屋を作りたいんだ僕は、まぁ、たまに一人で使ったりできたらいいなって、でもまぁ、基本はみんなで色々できたらなって!」


「……あのさ」


「なんだい?」


「私と子供を利用するの、やめてくれない?」


「……ごめんなさい」


 一年後、無事に家は建ったがやはり書斎は作られず、代わりに広めのウォンクインクローゼットが設置された。さようなら、俺の夢、男のロマン……

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