『短編』転生オネェ伯爵、悪役令嬢を育て直す
寿明結未
第1話 人生二度目のオネェは、孫がいたわ
アタシは元、いわゆるオネェさんだった。
それがなんの因果か……アタシが当時ハマっていた乙女ゲーム。
【愛して? ナイト様♡】という世界にやって来たのがわかったわ。
何故かって?
それはね――?
「なに? ブリジットを我が家で引き取る?」
「左様でございます」
その一言で全てを思い出すことが出来たの。
ブリジット・カーバングル。
【愛して? ナイト様♡】の悪役令嬢だったのよ。
途端に私は彼女の今後歩む未来を思い出したわ。
祖父に育てられた彼女は、我儘放題の暴れん坊。
気に入らないとなれば相手をどこまでも突き落とす。
正にハートの女王様。
そんなの許せるはずないじゃない!
絶対アタシはそんな子に育てしないわよ!
そもそも、今のアタシと血の繋がったブリジットを、悪役になんてさせるもんですか!
「わかった……。まず部屋を用意しよう。色合いは彼女にあわせた青を基調とした品格ある部屋にして頂戴」
「だ、旦那様?」
「これから私……いいえ、アタシは、あの子の祖父であり祖母になるわ」
そういえば口調が変わっても強くは言わないでしょ。
男言葉って疲れるのよ。
アタシも強く生きなくてはダメね。
この貴族社会でオネェとして生きていくには、アタシもブリジットも強く、そして上手く立ち回らなければ。
「安心してくれ。公の場では前の通りの喋り方に戻す」
「か、畏まりました」
「それより、部屋の改装急いで。青と白を基調とした美しい部屋よ」
「急ぎ取り掛かります」
ブリジットはピンクの部屋に住んでいたが、彼女は青が好きだった。
そして、ヒロインがピンクの部屋に住んでいるということでライバル心を燃やすシーンがあったのだ。
それをまず回避。
青と白を基調とした、令嬢に相応しい美しい部屋に仕立て上げるの。
後はヒロインと同じ学園には絶対通わせないわ。
プレイしていて思ったけど、あんな頭お花畑のヒロインとうちのブリジットが上手くいくはずがないもの。
それから暫くして部屋が出来上がり、程なくして青い髪と金色の瞳の美しい我が孫――になるのかしらね?
ブリジットがやってきたわ。
やって来た理由は、両親の離婚。
息子は女を作って逃走。
母親はブリジットを育てることを放棄。
そこで、アタシの元へとやって来たという理由。
「ブリジット……カーバングルです」
「ようこそ、ブリジット。貴女の祖父であり祖母となるカティラストよ」
「祖父であり……祖母……ですか?」
「貴女には徹底して淑女としてのアレコレを学んで貰うわ。でも怖がらないで……。ありのままの素直で優しい貴女をそのまま成長させるつもりでもあるから」
そう、ブリジットは素直で優しい女の子だったのだ。
けれど、祖父であるアタシ――カティラストが育児放棄したことで、悪役になってしまうのよね。
そんな事はさせないわ。
アタシのたった一人の孫娘。
いつかはこの家を継いで貰わないと……。
「アタシが貴女に求めるもの。それは最終的にはこのカーバングルの領地を任せられる素晴らしき女伯爵になってもらうということ。そう、貴女はこの家の跡取り娘となるのよ」
「わたくしが……ですか?」
「ええ、他所からは貰わないわ。貴女が女主人となるべく、それに相応しい教育を施します。でも、嫌な時は嫌、苦しい時は苦しい、ハッキリと告げなさい? 貴女についている口は、人を悪く言う口ではなく、自分の素直な気持ちを伝えるために今はあるのだから」
そう言って彼女の手を引いて屋敷の中に入り、彼女の部屋へと案内する。
青と白を基調とした美しい子供部屋。
ブリジットは目を輝かせて見ていたわ。
「今の貴女に必要な物は全て揃っているはずよ」
「ありございます! えっと……お祖父様? お婆様?」
「ああ、呼び方に問題はないわ。普通にお祖父様と呼んでちょうだい」
「あ、はい!」
「これから貴女は色々なことを学び、立派な淑女となるわ。でも、決して悪役のような人を蹴落とす女性にはならないこと。それだけは約束してちょうだい」
「分かりましたわ」
「では、長旅で疲れたでしょう。お風呂の準備もしているの。疲れを癒やして頂戴な」
――こうして、アタシとブリジットの生活は始まった。
アタシは絶対あの子を悪役令嬢にはしない。
何があってもね……。
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