第3話 異世界へ

生い茂る森林の中に小さいモノが揺れ動いている。

隼人はうっすらとしか見えない視界だが、なんとなく暖かな陽気を肌に感じていた。


(うーん、取り敢えず転生したのかな?ただ声は出ないな〕

モゾモゾ動く事は出来るがイマイチ身体にしっくり来ない。

いや、しっくりどころか違和感マックスである。

そうしてると目の前に巨大なイモムシが視界に入る。

(うわー!デカすぎデカすぎ、びっくりするんですけど〕

周りはイモムシだらけの芋洗い状態で身動きが取れない。

コレはまいったとぼんやり視界で自分を見る。

(俺が完全にイモムシ化しているんですけど!〕

 まさかのイモムシ転生に固まる隼人である。

 イモムシの兄弟と一緒に産まれたばかりと言う状態だった。

 (元人間の記憶があってイモムシかー。良いのか悪いのか分からないな。でも仕方がない、出来るだけ頑張って行こうかな。〕

 何事も受け入れる性格は前世と変わらずだった。

隣のイモムシAくんはなんか機嫌良さそう。なんとなくイモムシ同士、お互いの感覚は分かるようだ。

(お腹すいたな。〕

隣のイモムシA?B?くんがむしゃむしゃ葉っぱを食べて満喫中だ。

もはや30匹ぐらい居るので誰が誰やら分からないが。

イモムシAくんは近くの葉っぱは自分の食べ物だと周りには食べさせないように体でガードしている。

 なんか産まれてすぐに嫌な感じのヤツに会ったなと感じてしまう。

(そんなに独り占めしなくたって良いのに。ねぅねぇ、沢山あるからみんなに分けたらどう?〕

 言葉にはならないが何となく意味が伝わったイモムシAくんはからは嫌な顔して無視をする。

 っと言ってもそう感じる事が出来るのは元日本人であり、空気を読めるサラリーマンの能力かも知れないが。


ガサっと音がする方向を見ると大きな虫が大口を開けて兄弟に噛みついて捕食しました。

 (えー。そりゃたかだかイモムシなんだから補食される側も知れないと思う。ただ転生10分で大ピンチなんですけど!やばいヤツ来た〕

ふと気づくと今居るのは高い岩の上だった。

俺は周りの兄弟たちに体当たりして地面に落下させていく。最後にまだ葉っぱを飲み込んでるイモムシAくんを落として自分も落下する。

 (いててて、取り敢えずほとんどの同胞は無事みたいだ。でもコレ無理ゲーじゃない?〕

ふと周りを見てると兄弟達から感謝のスリスリが来た。

周りから葉っぱのお裾分けを貰い、お腹いっぱいになった。

 少しは役に立てて良かったと胸を撫で下ろす隼人イモムシだった。

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