第36話 告白

 一条の家を出ての帰り道。千春の家はすぐそこだが――


「少し一緒に歩いていい?」


「もちろん」


 停留所まで、千春は俺を送っていく形になった。


「晴真、ありがとう」


「何が?」


「私を選んでくれて」


「それは……お前は一条に言い負けて、また元に戻ってしまいそうだからな。手元に置いとかないと危なっかしい」


「それだけ?」


「そうだ……とは言えないかもな」


「ふふ。素直じゃないなあ」


 千春が俺の腕に抱きついてきた。


「お、おい……」


「たまには素直になったら?」


「よく言うよ」


 一条に素直になれなかったやつが。そして、俺にも。


「私は素直だから。だから言うね……好きだよ、晴真」


 唐突に千春が言った。

 俺も素直になるときかもしれない。


「……俺もだ」


「ありがとう……私と、付き合ってくれる?」


「……俺は嫌なやつだぞ。口も悪いし陰キャオタクだし」


「知ってるよ。だって、そんな晴真を好きになったんだから」


「そうか……だったら、好きにしろ」


「うん、好きにする!」


 こうして、俺と千春は付き合うことになった。


◇◇◇


 翌日の学校。

 千春と星野が登校してきた。


「おはよう。黒瀬」


 星野が俺を見てニヤニヤしながら言った。


「黒瀬、あんたやっぱヘタレだわ」


「はあ?」


「だって、千春に告白させたんでしょ?」


「はあ? させたんじゃない! 勝手に言ってきたんだ」


「ったく……こんなやつじゃ心配だなあ、私の千春が」


「誰がお前の千春だよ……俺の千春だぞ」


 ぼそっと俺は言った


「え? なんて? 聞こえなかったなあ」


「うるせえ!」


「アハハ」


 そこに露崎澪音がやって来た。


「黒瀬君、千春、おめでとう」


「ありがとう、澪音」

「ありがとう、露崎」


「これで私はお邪魔になっちゃうかな。お昼、部室に行っても大丈夫?」


「もちろんだよ。これからも来て」


 千春が言う。


「ありがとう。邪魔しないように気を付けるね」


 露崎は伏し目がちに去って行った。それを見て千春が追いかけようとしたが、星野が止めた。


「私が行くから」


 星野は露崎の方に向かった。


「やっぱり、ちょっと胸が痛いかも」


 千春が言う。


「じゃあ、別れるか?」


「そんなわけないでしょ!」


「だったら、堂々としてろ」


「う、うん……」


 まあ、そうできないのが千春の良さでもあるんだけど。


◇◇◇


 昼休み。

 露崎はいつものように俺たちの席に来た。


「千春、ごめんね。今日もお昼、一緒にいいかな。」


「もちろんだよ。行こう!」


 そう言って露崎の手を取り、一緒に教室を出て行く。

 その後ろを俺と星野がついていく形になった。


「星野……露崎の様子はどうだった?」


 小声で聞いてみる。


「さすがに落ち込んでるみたいだったよ~」


「そ、そうか」


「黒瀬は女泣かせだねえ」


「やめろ……」


「でも、安心して。澪音も弱くはないからね。蓮司のときも、私がハーレム筆頭になっても、全然諦めてなかったし。だから、まだまだ試合終了とは思ってないみたいよ?」


「それはそれでやっかいだけどな」


「ずっと片思いするって言ってた。けなげ~。惚れちゃいそう」


 星野がふざけて言う。

 だが、そのとき急に千春が振り向いた。


「梨奈、今、惚れちゃいそうとか言ってなかった?」


「へ? 言ったけど?」


「むぅ……」


 そう言って千春が俺をにらむ。


「は? 誤解だ! 星野が惚れそうになってるのは露崎だからな!」


「え、私?」


 露崎も振り向いた。


「そうそう! 澪音も可愛いなあって」


「そりゃ、私は学校一可愛いけど」


「言うねえ。でも、そういうとこ、好き!」


 星野は露崎に抱きついていく。

 結局、星野と露崎が前を歩き、俺と千春が後ろからついていく形になった。


「……気を使わせちゃったかな?」


 千春が言う。


「違うだろ。お前が気を使いすぎだ」


 いつもそうだ。千春は気を使いすぎる。俺は乱暴に千春の腕をつかんだ。


「え?」


「千春は自分を第一に考えるようにしろ。そうじゃないと、お前を好きなやつが悲しむぞ」


「……それって誰かな?」


 俺を上目遣いで見てくる。


「さあな」


「もう!」


「アイタ!」


 千春のパンチ力は向上しているようだ。

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