第18話 夫婦の反撃、金融チート!観星会の資金源を断て




首相特別補佐官室の深夜。





黒木圭介くろきけいすけと、情報局次席の白石葵しらいしあおいは、並んで巨大モニターを見つめていた。画面には、国際金融市場のリアルタイムの動向が映し出されている。





あおい観星会かんせいかいは、核計画の資金を凍結されたことで、最大の『生存戦略』を賭けてきた。日本株の暴落と、資源投資の強奪だ」





「ええ。彼らは、日本の経済を混乱させ、その隙に、アジアの資源市場を力ずくで抑えようとしています。このままでは、日本の年間GDPの10%が吹き飛びます」





(彼らの行動は、論理的な統制ではない。国家崩壊の未来に怯える、悲鳴だ。チートは告げている。この資金が断たれれば、中華帝國ちゅうかていこくの経済は、決定的な亀裂を生む)





圭介けいすけは、その焦燥を逆手に取る。





「彼らの資金源のすべては、アジアの特定資源に集中している。この暴落を利用して、逆に彼らの資金ルートを『一撃で半減』させる」





「それは…!国際金融市場を、私たち二人で操るということですか!?」





あおいは、一瞬の躊躇もなく頷いた。彼女の瞳には、「過去の罪を償い、未来を救う」という強い決意が宿っている。





「承知しました。行きましょう、圭介けいすけ。あなたの知略は、私が守る」





圭介けいすけは、チートと、あおいのリアルタイム情報を融合させ、巨大な国際送金システムにログインした。彼の指先が、時価総額数兆円の国際市場を、まるで将棋の駒のように動かしていく。





(その数十分間、彼の思考速度は、世界中のスーパーコンピューターの処理能力を遥かに凌駕していた。彼の脳内では、数万の取引データが、愛と復讐という非論理的な指令のもとに、完璧に再構築されていた。)





**数十分後**。





モニターには、観星会かんせいかいが資産を集中させていた特定資源の価格が、垂直落下していくグラフが映し出されていた。





『アハハハハ!ケースケ君、最高に面白い!君のバタフライエフェクトばたふらいえふぇくとは、金融システムに最高の「大混乱」を引き起こしたぞ!』





イーロン・マーズいーろんまーずの歓喜の声が響く。





(チートが効いた。だが、室内の空気の、微かな振動が、まだ耳の奥で反響している)





「これで、観星会かんせいかいの資金源のほぼ全てが、『ゴミ』と化した」





圭介けいすけは、深く息を吐いた。





(この歪みは、僕の命を削る。だが、彼女の温もりが、「愛の成就」という名の「調和の欠片」のエネルギーとなって、この痛みを癒やしている)





(その温もりは、僕の脳内に計算されたすべての勝利の方程式よりも、確実な力だった。)





**愛の勝利と、経済の勝利が、同時に成就した瞬間だった。**





あおいは、思わず圭介けいすけの背中に寄りかかった。一瞬だけ、二人の間に、張り詰めた作戦の空気ではなく、「愛する者同士」の安堵の温もりが流れた。





あおい





「ええ。私たちの役割は、これで終わりではありません。次は、外交の舞台です。」





窓の外の東京の空は、最も深い闇に包まれていたが、東の空に、一筋の薄い光が差し始めていた。それは、戦いの終わりではなく、新たな外交戦の夜明けを告げていた。





その光の中で、あおいは、圭介けいすけの背広の埃を、無言で優しく払った。





(資金源は断った。しかし、中華帝國ちゅうかていこくの影響力をアジアから排除するには、「外交という名の、国民の熱意」が必要だ。あの男のカリスマが、今こそ必要になる)

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