第12話 裏社会の首根っこを締めろ!国際送金システムの凍結




首相特別補佐官室。





黒木圭介くろきけいすけは、田中翔たなかしょう(デジタル戦略)と元国際金融家である高橋悟たかはしさとるを前に、極度の緊張感を漂わせていた。**二人の精鋭は、彼の次の言葉を待つ間、硬直したまま、ほとんど呼吸さえ忘れていた。**





「目標は、統一朝鮮共和国とういつちょうせんきょうわこくの極秘研究施設の『資金ルート』。官義偉かんよしひで元総理の情報から、資金が国際銀行間通信協会(SWIFTすいふと)を通じて、わずか10分後に移動する」





「10分!?」





高橋たかはしの顔が引きつる。国際金融の常識では、テロリストの資金凍結にさえ、数日はかかる。





田中たなか。君は、このSWIFTすいふと送金を『誤ったデータ』として、一瞬だけ、送金先をブラックリストの口座に書き換えろ。送金は即時停止される」





(モノローグ)**彼の意識は、完全に肉体から切り離され、国際送金システムのデータフローと一体化していた。その超人的な集中力は、もはや人間のものではなかった。**





「構うな。彼らは核兵器計画を進めている。我々に倫理を問う資格はない。**必要なのは、成功だけだ**」





圭介けいすけの言葉は、冷徹なやいばのように響いた。彼は、左腕の紋様を強く握りしめ、「チートの代償」を受け入れる覚悟を示す。





高橋たかはし。君は、凍結後、この資金が『人道支援』の名目で、別のルートに隔離されるよう、国際的な会計操作を準備しろ」





田中たなかは、冷や汗を流しながらも、猛烈なスピードでセキュリティ端末と格闘し始めた。キーボードを叩く音が、静かな室内に、激しい銃撃戦のように響く。





田中たなかの瞳には、成功への熱意と同時に、この常軌を逸した作戦を平然と指示する圭介けいすけへの、微かな恐怖が宿っていた。)





**この静かな室内の戦いが、統一朝鮮の極秘研究施設への、遠隔からの致命的な一撃となる。**






**残り5分**。






田中たなかが、「国際銀行の認証コードを突破しました!」と叫んだ瞬間、高橋たかはしが、「国際人脈による、資金の隔離、完了!」と報告した。





「完了です、補佐官!資金は、統一朝鮮共和国の裏社会から、完全に凍結されました!」





田中たなかは、安堵の息と共に、国際法で禁じられたセキュリティの最後の扉を、自らの手で閉ざした。高橋たかはしの表情にも、巨大な倫理的重荷を背負った「プロの顔」が浮かんでいた。





圭介けいすけは、初めて深く息を吐いた。





(これで、核兵器計画の資金はストップ。調和のくさびの最終ピースは、手に入らない)





**その瞬間、脳内にイーロン・マーズいーろんまーずの歓喜の声が響いた。**





『アハハハハ!見事だ、ケースケ君!「歪み係数(Distortion Factorディストーションファクター)」は過去最高を記録!最高のバグだ!』





圭介けいすけの左腕の紋様は、激しく赤黒く脈打っていた。紋様は、皮膚を這うように、胸元へと僅かに伸びていた。





(だが、ただの損失ではない。資金凍結という「運命の選択の覆し」により、僅かな「調和の欠片」のエネルギーが紋様を伝い、身体に流れ込んでいる…!)





しかし、圭介けいすけの瞳には、愛するあおいと、守るべき未来の希望の光が宿っていた。





(この狂気の戦いを終わらせるには、まず君の魂を解放しなければならない。満月まんげつの夜は、もうすぐだ…)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る