第7話 官義偉、その怨念を力に変えろ!老雄との交渉




国会議事堂から少し離れた、静かな老舗料亭の一室。





官義偉かんよしひでが、畳の上に正座し、冷たい視線で黒木圭介くろきけいすけを見据えていた。**部屋には、香木の微かな匂いと、二人の呼吸音だけが、やけに重く響いていた。**





「フン。何の用だ、黒木くろき。復讐でもしに来たか。…だがな、あの程度の失策、私にとっては小石だ」





「ご冗談を」





圭介けいすけは、畳の上に一つの資料を滑らせた。





**その動作には、何の感情も揺らぎもない。まるで、既に決着がついた盤面を、ただ淡々と整理するような冷たさだった。**





「これは…!」





かんの顔から、一瞬で余裕が消え去った。彼の顔に、叩き上げの政治家が持つ「絶望的な冷や汗」が滲む。





(馬鹿な、この裏取引は**私の脳内、そして紙の極秘文書にしか存在しない**はず…!)





貴方あなたの過去の過ちは、私には関係ありません。しかし、その過ちが、**『調和の論理』**によって仕組まれたものだとしたら?」





圭介けいすけは、静かに、しかし有無を言わせぬ声で核心を突く。





貴方あなたが総理の座を追われた、**あの夜の『判断ミス』**。あの時の**『一瞬の決断の迷い』**こそ、すべてが観星会かんせいかいが仕組んだ、**『調和の論理』**による誘導です」





**その言葉を口にする瞬間、圭介けいすけの脳裏には、あおいの命をもてあそんだ王毅然おうきぜんの醜悪な笑みがフラッシュバックしていた。**





かんは、畳に両手をつき、歯を食いしばった。





「馬鹿な…私は…あの時…!」





「私は**『たった一人の女の愛』**のために、世界を書き換えようとしている。貴方あなたは、**『日本の大義』**のために、**『自分の敗北』**を力に変えられますか?」





圭介けいすけは、左腕の紋様を見せはしない。しかし、彼の瞳は、**老雄の人生の重みを超越した、愛の狂気を宿していた。**





かんは、長い沈黙の後、深く息を吐いた。彼の顔には、復讐心を超えた「老雄としての愛国心」が再び宿る。**その沈黙は、この国の未来と、一人の老政治家の魂の重みそのものだった。**





「……いいだろう。私の敗北が、奴らの完璧な勝利だと言うのなら、私はその奴らの足元を、地獄に変えてやる」





圭介けいすけは、その言葉を聞いた瞬間、全身から一気に力が抜けるのを感じた。(最大の難関、突破……!)





彼は、左腕の紋様が**赤黒く脈打っている**のを、静かに見つめた。**「調和の論理」という巨大な運命を書き換えた代償**は、確実に彼の肉体を削っている。

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