第18話
彼等の信頼や信用といった、内面から作用する人間関係での武器は、今のような思想を肯定していては必ず手の届かないものだ。
例え協力ができなかったとしても、利用することはできる。この二人には思考の一端でも共有できれば、都合の良い状況を生み出せるかもしれない。
「しかしながら、殺せば良いということでもないのが、今の状況だ。話すと長くなるから先に結論を言うが、探偵側に比べて殺人側は圧倒的に不利だ。さっき話に出た監視カメラと九十人の探偵側生徒の存在。そして、一番厄介なのが検視官だ。奴等がいる限り、生半可な殺人は一瞬で足が付く」
「一体、君は何を――」
「その検視官ってのはなんなんだ?」
「この学園の検視官という存在は、指紋調査や血液検査などを依頼するだけでやってくれる万能調査員という扱いらしいが、そんなことは電子端末を見ればすぐにわかることだ。一々、聞いてくるな」
「わりぃ、わりぃ」
「つまり、俺達の行動には、探偵側とは比べものにならないほどのリスクが伴う。だがその一方で、ルール上殺人側が主導権を握れていることは利点の一つと言える。こちらが殺人を起こさない限り、探偵側の単位取得が叶うことはない。となれば、探偵側も過剰な警備体制を取れず、隙を作らざるを得なくなる」
「だから、待って――」
「そこで重要になってくるのが、監視カメラの配置だ。マップの切り替えボタンを押せば確認できるんだが、妙な配置になっている。これは恐らく、意図的に死角が作られているからだ。この事実が示すのは、施設の管理者側も全てがカメラの監視下におかれていれば、殺人など起きるはずがないと理解しているということだ。つまり、決して殺人が不可能という訳ではないはずなんだ」
「ちょ、ちょっと――」
「この監視カメラの死角と警備緩和のタイミングをうまく利用できれば、僅かだが勝機が生まれる。重要なのはその方法なんだが、それについては未だに考えあぐねている。やはり、逃げ切りを理想とするなら、毒殺だろうな。しかし、そうなると問題は入手ルートか――」
「待ってくれよ!」
ここまでは須川の制止を無視してきたが、さすがに無視できる声量ではなかったため、俺は須川の声に耳を傾けた。
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