人間交響楽

王様がいて

貴族がいて

平民がいて

貧民がいて

なんとかそれなりに

暮らしていた時代が

ありました

平民がいて

また平民がいて

平民ばかりがいて

たまに金持ちがいて

なかなかもめごとが

収まらない時代が

ここにあります

さてそれでは

われわれの

未来はどうでしょう

大した進化を

望むべくもないけれど

みんなが期待するのは

どんな世の中でしょう

平民がいて

平民どうしが助け合い

土地を分け合い

富を分け合い

戦争もなく

善意に基づいて

平和に暮らす時代

はたして

そんな時代が

来るのでしょうか

もしくは

動物がいて

植物がいて

自然があって

人間もいて

必要なだけの食べ物を食べ

必要なだけの場所で暮らし

朝起きて夜眠る

そんな時代が

過去にはありました

（記憶にないほど遠い昔ですが……）

つまるところ

わたしたちは

同じ一ヶ所に留まれない

あわれな浮き草なのかも

しれません

時の川を

流れ流れて

根なし草……

浮き草なら浮き草なりに

身の丈にあった

花を咲かせるのが

関の山でしょう

人間交響楽は

終わるところが

ありません

　　　　　　（了）