妖怪が見えなくなった日本人へ

デンコウさん

火の玉を見る方法

あなたは火の玉を見た事があるだろうか?

私は1度も見た事はない。

実は私が生まれ育った町は、昔は火の玉が見えると有名な街だった。


その昔、まだ洋服を着ている人がいなかった時代だ。

仲の良いと評判の夫婦がいた。

しかし、それを妬んだ男が夫に対して妻が不倫をしていると嘘を吹き込んだ。

嘘にショックを受けた夫は川に身を投げ、自ら命を絶った。

それを知った妻は後を追うように川に飛び込み、そのまま上がってくる事はなかった。

その夜、火の玉が2つ夜空に現れて1つの火の玉になると消えていったそうだ。

この火の玉は(いにんびぃ)と、この町で呼ばれた。

それからも、昭和初期まで町では火の玉を見たという話が絶えなかったらしい。


しかし、戦後に火の玉は見えなくなった。

夜空を見上げる暇もなかったのかもしれない。

みんながみんな死にものぐるいで頑張った。

頑張りのおかげで、戦争で荒れ果てた土地に町が蘇った。

町は昔と違い、夜でも明るく輝いていた。

火の玉が夜空を飛んでいても、気づかない程に明るく輝いていた。

夜空を見上げると、はるか遠くに飛行機の灯が見えるようになった。


私は戦後から今日まで頑張ってきた日本人に妖怪を見てもらいたい。

妖怪は心の隙間に入り込む"隙魔"なのだ。

あなたに火の玉を見る方法を教えよう。

仕事や勉学、さまざまな事で心が満たされているかもしれない。

そんな心に"隙魔"を作る時間を設けよう。

スマホを机に置いて、電気を消して寝る前に夜空を5分だけボーッと眺める。

それを続けたら、いつかあなたが見上げる夜空に火の玉が現れるかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る